我が恋よ、散ることなかれ【浦島坂田船】 (ページ7)

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「で、でかい……。」

　連れてこられたのは豪華絢爛な建物の前。と言っても見世の裏らしいが。
　なんでも彼の見世は大見世で、しかも総籬(そうまがき)だそうだ。そのため外装も内装も、他の見世とは比べ物にならないほどだとか。……だとしても、豪華すぎやしませんか。

「ここは見世の裏ゆうても裏口とかとはちゃうんよ。表は客が使ったりする方で、こっちは俺ら傾城とかが普段使うような扉やねん。」

　つまり現代で言うとプライベート扉って訳ですか。すごいっすねどんだけお金あるの。

「ま、とりあえず入るでー！！」

　彼に連れられるまま、私は彼と共に見世の中へと足を踏み入れた。
　ぎぎぎぎ、と音をならす木造の扉。その向こうもこれまた豪華な作りで白壁、赤床、赤階段、赤柵などに様々な装飾が施されている。見たこともないような建物に圧倒されるばかりだ。

「ぁ、紅里花魁！お帰りなんし。」

「兄さんお帰りなんし！」

　回廊を通っていた女郎、男郎であろう人たちは彼を見るとパッと姿勢を正して彼に挨拶する。そんなに偉いのか、この人。
　そして次に視線が注がれるのはそう、私。着物の間からこっそり見なくてもわかるくらいに視線を感じる。「誰？」何て声もちらほらと。

「ただいま戻りんした。」

「……花魁、その者は？」

「ああ、ちょっとそこで拾って……これから内儀さんに話しに行きんす。その間に誰か、この娘を綺麗にしてあげておくれな。」

「え、あの！？」

　綺麗にしてって何ですか私は今綺麗じゃないと！？……あ、制服汚れてるし綺麗ではないか。
　彼はさっと振り向いて私の耳元に顔を寄せた。

「全部終わった後で俺の部屋来て。待っとるから。」

「っ！？……は、はぃ……。」

　何やら低い声でそう言われ、あまりそういうのに慣れていない私は声を上ずらせてしまう。そんな私に彼はくすりと笑うと一人の女郎さんとともに奥に消えていった。
　姿が見えなくなると他の人たちは私を一瞥してから再び動き始める。……なんか怖いんですけど。

　そんなとき。ぱしっと腕を捕まれる。そちらを見れば13、14歳くらいの女の子二人がにこにこと私を見ていた。

「わっちらがご案内いたしんす！行きんしょう！」

「んへ？」

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※総籬･･･吉原で最も格式の高い見世

見世の裏、プライベート扉は「花や、花」の背景の建物の感じです。