我が恋よ、散ることなかれ【浦島坂田船】 (ページ21)

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　明け方。傾城たちが客と共に起き始め、一夜を共にした客を見送る。見世の玄関、見世の前にはそんな彼らの姿が増えていく。
　朝番の若衆はそのうちに夜の布団を回収し、洗濯するのだ。あとは傾城たちが二度寝を始めた頃に朝番以外の若衆が風呂の用意や朝御飯の準備などをする。私はというと、風呂の用意を終えて、洗い終わった布団を見世の裏に干しに来ていた。まだ傾城たちは二度寝の途中だろう。

「ふぃー……。」

　ばさばさと広げながら干すため、なかなかに疲れる。
　そんなときだった。

「A……？」

「ぇ……あ、紫里花魁。」

　扉から紫里花魁が出てきて、私の名前を呼んだ。こんな時間にどうしたのだろうか。彼は私を見つめたまま、ゆっくりと近づいてくる。少し様子がおかしい彼に私は戸惑いながら、「紫里花魁……？」と声をかけるしかできなかった。
　ついに私の前まで来た彼。少し上からの目線は、私からちっともずれない。逆に私が恥ずかしくなるくらいだ。

「……A、や。」

「んえ、はあ。」

　ボソッと呟いた彼。その目がきらりと光を帯びた。そして彼は干された布団の後ろに私を連れていく。
　突然の行動に驚きながらも連れられてしまう私。しかし、連れていっただけでは彼は止まらなかった。

「んむっ！？」

「ん……は、A……。」

　荒々しく重ねられた唇。途切れ途切れに私の名前を呼ぶ彼。驚いて彼の胸板を押すも、彼は私の腰に腕を回して引き付け、反対の手で私の後頭部を抑えた。逃げられない。
　はむはむと下唇と食まれる。きつく閉じた私の唇に、開けろ開けろと彼の舌が押し付けられる。ちらりと見た彼の目はぎらぎらと光り、まさに狼だった。

「む、ら……んっ！？」

「んは、ええ声やなぁ……もっと聞かせてや。」

　突如として襲う変な感覚。私の後頭部を抑えていた手が、首筋をつーっとなぞったのだった。その手はだんだんと下へと伸びていき、着物の間を通っていく。
　それと同時に驚きで開いた私の口内へと彼の舌が侵入してくる。ぴちゃぴちゃ、水音が誰もいない庭で響く。舌を絡めて、吸われて、自分を襲う感覚に下っ腹が疼いた。
　変な感じ。ぼーっとする。頭が真っ白になる。息ができない。抵抗する力は弱い。胸の膨らみへと彼の指先が届く頃、ふっと私の意識は途切れた。

*

「もう、止めらんないわ。俺。」