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第56話 ページ8

町から徒歩5分。森の中を紅丸さんは迷わず突き進む。

きっと尋ねても教えてくれないだろうから、敢えてものを言わず着いていく。
すると、明るい光が目に飛び込んできた。


『わぁ…!綺麗!!』

紅「ここは俺のお気に入りの場所だ。昔からのな」

ぽっかり空いた土地。
辺り一面に風に揺れる白と黄色の水仙。
それらを掻き分けるように流れる小川。

花の揺れる音、鳥のさえずる音、風のそよぐ音、優しい陽光。そのどれもが身に染みる。

紅丸さんは軽く背伸びをすると、小川まで歩き、靴を脱いでその澄んだ水に足を浸した。


紅「おい。てめえも見てないで座れ」
『あ、はい』




長い沈黙。でも心地いい。



不意に私の口が動く。

『紅丸さん。私……』

先程、ジョーカーから聞いた私と私の家族についての真実を全て述べた。



紅「……そうか。それはそのままお前んとこの大隊長に伝えろ。無理そうなら俺から…」

『いえ、自分で出来ます。お気遣いありがとうございます』

紅「そうか…。…ジョーカー。話は聞いてる。最近何やら暗躍してるらしいな」

『ええ』


強い風が吹いて、私と紅丸さんの髪が強く揺れる。

紅「どうしてそいつは、お前について詳しいんだろうな。聖陽教暗部の拠点についても、お前の家族についても、そりゃまるで…」





そこにいたみたいだ。




『…ジョーカーはそこにいた…?』

紅「お前、屋敷での心中から逃れた後、どうやって皇王の元へ行った?」

『……記憶がなくて…でも傷だらけの私が皇王様の寝室のベッドに寝かされてたって聞いてます』

紅「……誰かが、お前をそこまで運んだのか」




謎は深まるばかり。


紅「…まァ、そういう堅苦しい話は後回しだ。ここへは気分転換に連れてきた」

紅丸さんは足を水中で泳がせた。

『あ、メダカですか。あれ』

紅「さぁな。俺は魚は知らねー」

『魚だけじゃないでしょ。よく知らないの』

紅「てめえ……」



私は水に手を浸して魚を追いかけた。魚は素早く逃げていく。
追っても追っても、逃げられる。


私は、逃げられるのだろうか。
逃げ続ける人生なのだろうか。
はたまた、これから何を追えばいいのか。



見える未来は、暗すぎる。

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まっちゃ@色松推し(プロフ) - とてもこの作品大好きです!これからも頑張ってください!!応援してますね! (2020年10月27日 20時) (レス) id: a8031c7e26 (このIDを非表示/違反報告)
愛華 - 続き楽しみに待ってます! (2020年8月9日 22時) (レス) id: 499c5e2247 (このIDを非表示/違反報告)
月坂美青(プロフ) - 瑠月さん ジョーカー好きなかなか身近にいないので、嬉しいです!ありがとうございます (2020年5月10日 22時) (レス) id: 8bdfbe2e5c (このIDを非表示/違反報告)
月坂美青(プロフ) - ソロ3さん ありがとうございます!頑張ります (2020年5月10日 22時) (レス) id: 8bdfbe2e5c (このIDを非表示/違反報告)
瑠月 - ジョーカー好きなので、沢山絡みがあって嬉しいです!これからも楽しみにしています! (2020年4月26日 2時) (レス) id: 0125c01ae4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:月坂美青 | 作成日時:2020年3月22日 2時

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