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「なあ、さっきした子供何人欲しいっていう話、嘘じゃないからな」

「ハイハイ、さっさと発進してください」


しつこく言い募る降谷さんを適当にあしらって、私は静かに走り出した車が、一定の間隔を置いて設置された街灯に照らされるのをぼんやり眺めていた。

降谷さんはこの先、私なんか振り切って、出世街道をひた走るのだろう。最年少の警察庁長官も夢じゃない。今まで現場一本で生きてきた潜入捜査官だったけど、降谷さんは元々頭脳派の人間だ。


そんな人の未来に、私が寄り添って立っている想像がつかない。


「降谷さん」

「ん?いつもみたいに零って呼んでくれていいんだぞ?」

「どうしてそんな雑な演技をするんですか」


私の言葉に、降谷さんは不自然に押し黙った。


「風見さん含め、部下一同心配してます。赤井なんか貴方の言葉鵜呑みにしたらしいじゃないですか。アイツ日常生活はポンコツの極みなんで、あんまりからかわないであげてください」

「僕とドライブデートしてる時に他の男の名前を出すとはいい度胸じゃないか」

「微塵もそんな事思ってないくせに」


そう言うと、降谷さんはいいや、と言って、チラリとこちらを向いた。

白い街灯に照らされた顔は、何故かとても儚く見えた。


「本気でそう思ってるよ」

「・・・・・・ならいい加減いつもの降谷さんに戻ってください。『これ公』最近全然聞かないですよ」

「あれは好きで言ってたんじゃない」

「え、そうだったんですか?」


降谷さんは暗がりの中横顔でも分かるくらい呆れた顔になった。


「好きで言う訳ないだろ、あんな言葉。でもああ言ったら君達頑張るだろ?」

「自覚なかった・・・・・・」

「だろうな」


くつくつ笑う降谷さんが“どっちの”降谷さんなのかは判別がつかなかった。

その内警察庁の地下駐車場について、降谷さんは静かに車を止めた。


「A」



暗闇の中だった。

額に、温かくて柔らかい何かが当たった。



「──────降谷さ、」

「さあ、仕事だ阿木。今日摘発した奴らの関係者を洗い出すぞ。明日までには検挙に乗り出したい」

「・・・・・・了解」


呆然とした私を置いて、降谷さんは先に車を降りていた。

どうにか声を出して、私はそっと額に触れた。


降谷さんのことが、ますます分からなくなった。

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エリンギ(プロフ) - おかずさん» コメントありがとうございます!ご愛読本当に感謝です! (2022年9月20日 20時) (レス) id: d64584d3be (このIDを非表示/違反報告)
おかず(プロフ) - 完結おめでとうございます!すっごく好きな作品だったので完結は寂しいですが、読み直したりしてまた楽しみたいと思います。素敵な作品をありがとうございました! (2022年9月20日 19時) (レス) @page48 id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)
エリンギ(プロフ) - ぴょんぴょんさん» ご協力感謝します!お陰様で赤星になりました。 (2022年9月14日 22時) (レス) id: d64584d3be (このIDを非表示/違反報告)
ぴょんぴょん(プロフ) - すごい面白いです!こういうぶっ飛んだ降谷さんも大好きです!赤星ってどのくらいの投票でなるんでしょうかね。とりあえず周りの友達に宣伝してみます! (2022年9月14日 22時) (レス) id: 78f9c276ca (このIDを非表示/違反報告)
エリンギ(プロフ) - 猫モドキさん» ありがとうございます笑 (2022年9月9日 17時) (レス) id: f698343d68 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:エリンギ | 作成日時:2022年9月1日 10時

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