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“あんたとAに似てる”
つまり、先生と私に似ているってこと?何に似てるの?
「それって、どういう……」
聞き返そうとすると、志麻は“そろそろ始まるから、ステージで待機すんぞ”と立ち上がって私を置いて先にステージの方へ歩いていった。
教えてくれてもいいじゃん、と少し不貞腐れながらも私もステージへと向かう。
……似てる。似てる、か。
先生が残していったもやもやと、志麻が残していったもやもやを胸に抱えたまま幕が上がってしまったステージ。眩しいくらいの照明が、私を照らす。
客席には沢山の人がいて。この中に、先生もいるんだよね。ジュリエットを本気で演じろって言った先生が。
(……そんなこと言われても、)
分からない。本気でやれって、どういう意味なの。
分からない。そう言った貴方の気持ちも、その言葉の真意も。
……分からない。先生と私は、何に似てるって言うの。
そんなことを考えながら、淡々と台詞を口にしていく。……あぁ、練習の時も思ったけれど……やっぱり私は、ジュリエットが嫌いだ。
自分の想いに心酔して自分勝手な行動をするジュリエットが、理解出来ない。
「あの窓から零れる光……向こうは東だ、それならばジュリエットは太陽だ」
そんなロミオの台詞に、私は飛んでいた意識を呼び戻された。“ちゃんとやれ”という志麻の目線が痛い。
ちゃんとやってないから、何も言い訳出来ないけれど。
チクリと刺さる志麻の視線から目を逸らし、私は例の有名な台詞を口に出そうと、
「あぁロミオ、どうして貴方はロミオな……の……」
したところで、さっきの言葉の意味と先生の想いに気付いてしまった。
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