心臓が縮まる ページ24
こんな、泣いていても仕方ないのに。
それでも、止まることを知らない涙は
こぼれ落ち続ける。
口を強く引き締めて、下を向く。
アレクシはこんなときも涼しい顔でいる。
悠々と紅茶を飲み、本を開いている。
冷めきった青い目で本を見下ろし、
微動たにせずに読み進めている。
暇潰しに読んでいるとは思えないような、難しい本を読んでいるのだが。
ただ、静寂の時間が続いた。
どうして、アレクシはここにいるのかしら。
それに、しばらくここにいろって＿？
安定してきたユミはそんな疑問を持っていたが、相手はあのアレクシ。
私たち労働者の身で軽々と話しかけられない。
いつも、絶対的な存在で恐れられていた。
それはユミにとっても変わらない。
逆らえば、どうなるか分からないのだ。
実際に逆らった人がいると聞いたことがあるが、
ーその人は精神病と重症の怪我を負って別人のようになって帰ってきたというのを聞いたことがある。
ただ、ここにいれば私は仕事ができないわ。
今だって賃金が減らされているかもしれない。
やっぱり、ここで黙ってたらいけない。
アレクシの方を横の目で少し見るも、
そんな決意はもう揺らぐ。
＿やっぱり、すごく怖い人。
ただ本を読んでいるだけなのに、
決定的に私とは違う存在という恐れが出てくる。
まして、アレクシは貴族の人でさえ、一目おかれているくらいなのだから。
「あ、あの、、。
ここにいろってどういうことですか、」
アレクシは本を閉じた。
そして一口紅茶を飲む。
「本当はすぐにでもあの汚ならしい農場に行かせて
一生惨めに手が動かなくなるまで働いてもらいたいが、
俺の気が変わらないうちに適当に過ごしとけ」
「金は変わらず出してある」
「、、、？」
ユミの思惑は、書くまでもない。
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作者名：三兄弟だんご | 作成日時：2018年6月19日 0時
