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幼馴染みとは、時に面倒臭い。
昔とは違うんだと分かった瞬間、もうどんな顔をしたら良いのか分からない。
翔は大人になってるんだと理解した瞬間、もう何を言えば良いのか分からない。
翔に手を引かれ縁側まで来てプールを見下ろす。
薄く水が入ったそこは夕焼けの中、風で静かに水面を揺らしていた。
「足湯ならぬ、足プール」
「...え？」
「縁側に座って足だけここに突っ込んでるとキモチイーの。お前が来るまで一人でやってたんだけどオススメ」
「...あ、あぁ！気持ち良さそう！」
だろ？と座った翔が縁側から脚を投げ出してその足先をプールの中に入れた。
...ビックリした。またプールに入ろうって言われたのかと思った。
私も隣に座ってプールの中に足を入れる。冷たくは無い水が、足先を濡らす。
翔が林檎を齧る。シャクシャクと咀嚼する音。
「なぁ、いっこ訊いて良い？」
「うん」
「A、俺のコト好きなの？」
「え...？」
「答えろって」
ゴクン、と唾を飲み込んだ音。
和室に昔からある掛け時計の秒針が進む音。
「...私は...」
ゴロン...と齧りかけの林檎が畳の上を転がったと同時に、私の体も畳の上に倒れていた。
「俺の事、好きじゃないなら今すぐ俺を突き飛ばして出てって」
両腕を立て覆い被さって来てる翔が、私を見下ろしながら言う。
「突き飛ばされなかったら、俺はやりたいコトやるよ？」
転がった林檎から、甘い匂いが漂って来る。
「私...」
「結局のところお前はさ、どうしたいの？」
「......」
「俺に愛される気、あんの？」
この甘い香りは本当に林檎？翔の香りなのかもしれない。
縁側からブラリと出した脚の先はもう、宙に浮いている。
「......だって恥ずかしくて...」
「恥ずかしいのは俺も同じ」
「嘘だ...」
「ガキの頃にお前の裸なんか腐る程見てんだよ。お前も俺の裸腐る程見たろ」
「......」
「でも、そん時とは色々違ってんだろ？」
そう言った翔の視線が胸元に来たから、服着てるのに思わず両手で隠す。
「俺だって色々違ってんの」
「......」
「それ見せ合うのなんか、恥ずかしいに決まってんだろ」
「......」
「ってゆーか、結局Aはどう思ってんだよ」
苛立ったように言った彼の頬に触れた。
「私、翔を突き飛ばさない...」
「...それって？」
「......察してよ...」
翔の頬が、掌の下で少し動いた。
濡れた足先を、生温い風が撫でて行く。
翔の唇は、林檎の味がした。
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めぐお(プロフ) - 久しぶりに読んだイロコイ。やっぱり大好きなお話です。残してくれてありがとうございます。 (2022年9月16日 16時) (
レス) @page47 id: 17cbbe6ec7 (このIDを非表示/違反報告)
莉依(プロフ) - 何度読んでも、やっぱりイロコイのお話は良い。大好き。 (2019年1月8日 0時) (レス) id: c571097cf8 (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - 結城ちゃんがビール飲めるようになってることに感動です( ；∀；) (2018年8月24日 15時) (レス) id: f393ece0e8 (このIDを非表示/違反報告)
mama(プロフ) - やーっと読むことができました。先生の『行間を読みなさい』が久々に聞けてドキドキしちゃいました。それぞれの恋のはじまりが丁寧に伝わりました。もう、恋をする年齢ではないけれど、お話の中では恋をしていきたいな。レイさん、いつもありがとうございます。 (2018年8月14日 6時) (レス) id: dc084211e8 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - イロコイ…続きが拝読出来て感動♪それと大野さんの「ともちゃんが猫を拾ったあの時、おれは恋を拾った」に心臓がドキューンと殺られたｗｗｗ (2018年8月8日 21時) (レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2018年5月21日 18時
