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打ち上げの時間が迫って来て、少しでも見える場所に行こうとみんなで移動を始めた。
私は食べ終わってない綿飴を片手に、集団の一番後ろをついて行く。
「それ、美味いか？」
水鉄砲を片手に持った二宮くんが後ろ歩きで近付いて来て、私の綿飴を指さした。
「美味しいよ」
「砂糖の塊でしょ」
「そうだけど」
空が明るくなる。
お腹に響く大きな音。
「始まったー」
二宮くんが空を見上げた。
「綺麗だね」
「火薬の塊でしょ」
「そうだけど」
2人で笑い合う。
湿った空気も、心地よく感じてしまう程。
「なぁ、あっちの方が花火よく見えんじゃね？」
「え？」
綿飴を持ってない方の手首を二宮くんが掴んで、横道に私を連れて行った。
人波に逆らうようにして、進む。
私は焼けた胸に痛みを感じながら、二宮くんのうなじを見詰めた。
背中で花火がどんどん打ち上がる。
花が開く度に、その音が地面を揺らす。
「二宮くん、そっちじゃ花火見えない...」
「そう？」
繋がれた手は離されないままで、かなり歩いた。
気付けば、人もまばらだ。
「お前の顔はよく見えるよーになったけどな」
「...え...？」
「マヌケづらー」
今度は至近距離なのに、鼻に水をかけられた。
手の甲でそれを拭いてると、彼も指先で私の鼻に触れた。
「五十嵐さ、まだオレのコト軽いとか思ってたりする？」
「.....」
「『運命』なんて、簡単な感情で言えると思ってんの？」
いつかの会話が蘇る。
「知らないだろうけど、オレお前のこと好き」
花火は見えない。
ただ、音だけが響いて来る。
「あー、やっと言えた」
「.....」
「オレと付き合って欲しいなー...って」
気付くと足元に綿飴が落ちていた。
いつの間に落としたんだろう。
「...やだ？」
二宮くんが、ちょっと拗ねたような表情を見せた。
「違う...！何か、夢みたいで...」
そんな乙女っぽい台詞が自分の口から出た事にも驚いたけど
「覚めない夢もあるよ」
すっかり声変わりした声が零した台詞に、私は腰を抜かした。
膝から崩れ落ちた。
そんな私を見てゲラゲラ笑いながらしゃがんだ彼は、また水鉄砲で私のおでこに水をかける。
「オレが証明したげる」
水で濡れたおでこに、二宮くんの唇が触れた。
・
長い片想いが終わった夏から、数年が経った今。
「証明するって約束したでしょ？」
花火の見えないあの場所で、その音だけを聴きながら
彼は「夢、覚めなかったね」と、私の左薬指に永遠を通す。
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めぐお(プロフ) - 久しぶりに読んだイロコイ。やっぱり大好きなお話です。残してくれてありがとうございます。 (2022年9月16日 16時) (
レス) @page47 id: 17cbbe6ec7 (このIDを非表示/違反報告)
莉依(プロフ) - 何度読んでも、やっぱりイロコイのお話は良い。大好き。 (2019年1月8日 0時) (レス) id: c571097cf8 (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - 結城ちゃんがビール飲めるようになってることに感動です( ；∀；) (2018年8月24日 15時) (レス) id: f393ece0e8 (このIDを非表示/違反報告)
mama(プロフ) - やーっと読むことができました。先生の『行間を読みなさい』が久々に聞けてドキドキしちゃいました。それぞれの恋のはじまりが丁寧に伝わりました。もう、恋をする年齢ではないけれど、お話の中では恋をしていきたいな。レイさん、いつもありがとうございます。 (2018年8月14日 6時) (レス) id: dc084211e8 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - イロコイ…続きが拝読出来て感動♪それと大野さんの「ともちゃんが猫を拾ったあの時、おれは恋を拾った」に心臓がドキューンと殺られたｗｗｗ (2018年8月8日 21時) (レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2018年5月21日 18時
