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研修の時、彼女は俺の持ち物を見て「可愛いなー」と笑っていた。
軽蔑するでも、落胆するでも無く、フラットに「松本くんに似合うわー」と。
それが心地良かった事を思い出す。
「ドールハウス作るの？」
「んー...どうしよっかなぁと思って。創刊号安いし」
「でもこういうのって意外と合計したら高額なんでしょ？」
「相変わらず現実的だな」
「女はそんなもんよー」
俺の知ってる女子達はふわふわしてて、わたあめ食って生きてんのか？って言いたくなるような子ばっかなんだけど。
「五十嵐って肉食って生きてそうだよな」
「何それ、褒めてるの？貶してんの？」
「俺的には褒めてるんだけど」
「なら、ありがとう。肉は好きだよ」
「じゃあ、今から肉食いに行く？」
「松本くんの奢りなら」
「同期なんだから割り勘だろ」
結局ドールハウスのムック本は買わずに、五十嵐と本屋を出て焼肉屋へ行った。
生で乾杯してから二杯目も生を飲む五十嵐の前で、二杯目は甘めのカクテルを頼んだ俺に彼女は特に何も言わなかった。
ただ、俺のスマホを見て「何でこんなシンプルなケースなの？」と不思議そうに言った。
「前は可愛いの付けてたよね？」
「んー...何かいちいち勘ぐられるのが面倒になって」
「あ、それ『彼女さんに付けてって頼まれてるんですか？』とか？」
「そうそう。彼女居ないって言っても信じて貰えないし」
「彼女居ないってのが、もう嘘っぽいもんね。松本くんの場合」
アハーと笑ってホルモンを口に運ぶ五十嵐。
「お前は彼氏いないの？」
「え？」
「あ...いや、こういう場面では訊かなきゃ失礼かなと思って」
「それを言っちゃったら逆に失礼でしょ」
呆れたような顔をして彼女は「いない」と短く応えた。
「可愛げの無い女は男から好かれないんだよー」
「可愛げの無い女...五十嵐が？」
「可愛い女の子ってのはねパンケーキとかパフェとか食べて、ホルモンなんか食べないんだよ」
「俺はホルモン食べるような女が好きだけど」
「...可愛い物が好きなくせに？」
「可愛い物は好きだけど、可愛い女の子はあんまり好きじゃないかも」
お互い箸を持ったまま、顔を見合わせる。
「いや、お前が可愛くないって訳じゃ無くて」
「...え？」
「あれ？俺、何言ってんの？」
「ちょっと松本くん、何言ってんの？」
「おいおい」なんて照れ臭そうに言いながらホルモンを俺の皿に乗せた彼女の笑顔は、戸惑う程に可愛く見えた。
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めぐお(プロフ) - 久しぶりに読んだイロコイ。やっぱり大好きなお話です。残してくれてありがとうございます。 (2022年9月16日 16時) (
レス) @page47 id: 17cbbe6ec7 (このIDを非表示/違反報告)
莉依(プロフ) - 何度読んでも、やっぱりイロコイのお話は良い。大好き。 (2019年1月8日 0時) (レス) id: c571097cf8 (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - 結城ちゃんがビール飲めるようになってることに感動です( ；∀；) (2018年8月24日 15時) (レス) id: f393ece0e8 (このIDを非表示/違反報告)
mama(プロフ) - やーっと読むことができました。先生の『行間を読みなさい』が久々に聞けてドキドキしちゃいました。それぞれの恋のはじまりが丁寧に伝わりました。もう、恋をする年齢ではないけれど、お話の中では恋をしていきたいな。レイさん、いつもありがとうございます。 (2018年8月14日 6時) (レス) id: dc084211e8 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - イロコイ…続きが拝読出来て感動♪それと大野さんの「ともちゃんが猫を拾ったあの時、おれは恋を拾った」に心臓がドキューンと殺られたｗｗｗ (2018年8月8日 21時) (レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2018年5月21日 18時
