●花火【N】 ページ32
これは私の長いようで短い、でもやっぱり長い片想いの話。
始まりは高校1年の春。
ありがちな『同じクラス』で出会った少し大きめの制服に身を包んだ彼は、色が白くてまるで女の子のようだった。
だけどちゃんと男子な彼は、声変わりの途中なのか掠れ気味の声で自己紹介をした。
「二宮和也です」
ほんの少し微笑んだ二宮くんの口元に、私は恋をした。
だけど、何も出来ないまま単なるクラスメイトとして過ごした1年間。
2年生になる時「クラス替えの前に告白するんだった…」と後悔した。
でも私と二宮くんは2年生も同じクラス。
告白しなかった事をあんなに後悔したはずなのに、同じクラスになったらなったで「気まずくなったら嫌だ...」と告白しないまま。
もう、告白するなんて勇気はどこかに消えていた。
ただ、二宮くんを好きな気持ちは変わらなくて。
いつか彼に彼女が出来る日が来るのかもしれない...と考えるだけで悲しくなっていた。
3年のクラス替えが掲示板に発表された時
「3年間オレと同じクラスなの、お前だけだね」
知らない間に隣に立ってた二宮くんが、ポツリと言った。
「腐れ縁かな」
私が照れ隠しに言うと、彼はフフッと笑う。
「そこは『運命かな』とか言うんじゃないの？」
その口元は私の恋したあの口元で、チラリと寄越された視線に胸が焼けそうだった。
ううん...焼けたんだと思う。
だって胸がチリチリと痛かったから。
「...運命って、そんな簡単に使う言葉じゃないよ」
「そ？オレはちょっと本気で思ったんだけど」
「二宮くん、あんまり女子にそーゆー事を言っちゃダメだと思う」
「なんで？」
勘違いさせるから。
女子は、そーゆー言葉に弱いから。
しかも好きな男子からそんな事を言われたら、嬉しいのに悲しくて、切ないのに喜びそうになって、自分の感情なのについていけなくなるから。
「軽い男子だと思われるから！」
全部を飲み込んで笑ったら、二宮くんは少し口角を上げて「なーんだそれ」と呟いた。
・
「え？花火大会？」
夏休みに入って暫くしたある日、自宅で受験勉強をしてた私にかかってきた電話は同じクラスの女友達からだった。
「そー。8月の初めにあるでしょ？」
「うん、あるねぇ」
「勉強の気晴らしにクラスで行こうって話になって」
「クラス...」
「男子も来るみたいなんだけど」
「そうなんだ...、男子も...」
参加すると返事をして電話を切った時、自分の頬が緩んでる事に気付く。
焼けた胸が疼いた。
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めぐお(プロフ) - 久しぶりに読んだイロコイ。やっぱり大好きなお話です。残してくれてありがとうございます。 (2022年9月16日 16時) (
レス) @page47 id: 17cbbe6ec7 (このIDを非表示/違反報告)
莉依(プロフ) - 何度読んでも、やっぱりイロコイのお話は良い。大好き。 (2019年1月8日 0時) (レス) id: c571097cf8 (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - 結城ちゃんがビール飲めるようになってることに感動です( ；∀；) (2018年8月24日 15時) (レス) id: f393ece0e8 (このIDを非表示/違反報告)
mama(プロフ) - やーっと読むことができました。先生の『行間を読みなさい』が久々に聞けてドキドキしちゃいました。それぞれの恋のはじまりが丁寧に伝わりました。もう、恋をする年齢ではないけれど、お話の中では恋をしていきたいな。レイさん、いつもありがとうございます。 (2018年8月14日 6時) (レス) id: dc084211e8 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - イロコイ…続きが拝読出来て感動♪それと大野さんの「ともちゃんが猫を拾ったあの時、おれは恋を拾った」に心臓がドキューンと殺られたｗｗｗ (2018年8月8日 21時) (レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2018年5月21日 18時
