●じゃなくて。【A】 ページ26
『小悪魔』だとか『あざとい』だとか、男子に使う言葉では無いと思っていた。
それは可愛くて異性ウケの良い女子にこそ似合う言葉、そう思ってたのに。好きか嫌いかは別として。
まさか昔の友達が、しかも男が、そんな言葉がピッタリ似合う種類の人間に成長して再び現れるなんて想定外。
「おーい、Aー」
「...雅紀」
「何してんの？暇してんの？暇してんだね」
「本読んでんの、暇してない」
「暇だから本読んでんじゃないの？」
大学の中庭で昨日買ったばかりの小説を読んでたら、雅紀がアイスキャンディーを咥えながら近付いて来た。
水色で雅紀の好物の安いやつ。少し前に「値上がった」とか言って嘆いてた。
「Aも欲しい？」
私の隣に座った雅紀が大きく開いた口から出した食べかけのアイスキャンディーを、私の目の前に差し出す。
「いらないよ、汚い」
「なーんで汚いの！俺のヨダレなら平気でしょー？」
「ヨダレ...」
結局雅紀は、アイスキャンディーをまた自分の口に咥えてゴロンと芝生に仰向けで寝そべった。
「あっついねー」
「暑いね」
「溶けちゃいそうだねー」
「雅紀はもう脳ミソまで溶けちゃってそうだけどね」
「アハ、ひどーい」
私の腰を雅紀がグーパンチする。ポスって緩く。
痛くはないけど、何だか拳が当たった場所がじんわりと熱を持った...気がする。
雅紀とは大学に入った時に偶然再会した小学校の同級生だ。
中学から違う学校だったから六年振り。
入学式の後に、あっちから「もしかしてA？」と声を掛けて来た。
「学部まで一緒なんて、運命の再会かな！」なんてニッコニコしてた雅紀は子供の頃とあんまり変わってない感じもしたし、何故か全然別人にも見えた。
「ハズレ」
食べ終わったアイスの棒を空に突き上げてブラブラさせてる。
「残念だったね」
「ホントだよー、当たったらAにあげようと思ったのに」
あーあ、って言いながらゴローンと体半分転がって私に近付いて来た。
私は隣で俯せになってる雅紀の背中をチラっと見て、また本を読む。
「何でこんな暑いのにAは外で読書なんかしてんの？ガッコの中は涼しいよ？」
「雅紀こそ、暑いのに何で外に居るの？」
「Aが居たからー」
「え？」
「Aと一緒に居たいなーって気分だったの」
更にゴロンと転がって来て、仰向けになった雅紀の体はとうとう私の体と引っ付いた。
「...暑いよ」
「暑いねー！」
笑った雅紀の額に汗が浮かんでる。
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めぐお(プロフ) - 久しぶりに読んだイロコイ。やっぱり大好きなお話です。残してくれてありがとうございます。 (2022年9月16日 16時) (
レス) @page47 id: 17cbbe6ec7 (このIDを非表示/違反報告)
莉依(プロフ) - 何度読んでも、やっぱりイロコイのお話は良い。大好き。 (2019年1月8日 0時) (レス) id: c571097cf8 (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - 結城ちゃんがビール飲めるようになってることに感動です( ；∀；) (2018年8月24日 15時) (レス) id: f393ece0e8 (このIDを非表示/違反報告)
mama(プロフ) - やーっと読むことができました。先生の『行間を読みなさい』が久々に聞けてドキドキしちゃいました。それぞれの恋のはじまりが丁寧に伝わりました。もう、恋をする年齢ではないけれど、お話の中では恋をしていきたいな。レイさん、いつもありがとうございます。 (2018年8月14日 6時) (レス) id: dc084211e8 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - イロコイ…続きが拝読出来て感動♪それと大野さんの「ともちゃんが猫を拾ったあの時、おれは恋を拾った」に心臓がドキューンと殺られたｗｗｗ (2018年8月8日 21時) (レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2018年5月21日 18時
