＊story 86＊ ページ46
*
「……あ、あの」
冷たい空気が漂う中、最大限に小さくした音量の声でさえ、嫌に響く。
目の前の男はいつも見ていたのより深く帽子を被り、若干俯き加減なのもあって表情は見えない。しかし、そこから漂う気配は並々ならぬ殺伐とした雰囲気だった。もう、それは妖気並に。
……これ、どうするのが正しいんだろう。
私を連れてくるだけ連れてきたあのボインの金髪美女は、ホテルのカードキーを私に渡しただけで「GOOD LUCK！」と言って軽快な足取りでその場から立ち去った。
そう、つまりは私は入る前からもうこの冷たい空気が充満していると分かっている部屋の前に一人残されたわけだ。
“このまま部屋に入らずに帰る”という考えも浮かんだは浮かんだが、それは後々がとてつもなく恐ろしかったので、未遂に終わる。
ピッと音を鳴らして開いたドアをゆっくりと慎重に開く。それはまるでお化け屋敷に入る前の子供のような足取りで。
こっそりと中を覗くように見渡すと、姿が見えないどころか人の気配はしなかった。
これ、中に誰も居ないんじゃね？
「……なーんだ、まだ来ていないのか」
一瞬にしてそう警戒心を解いたのが痛恨のミス。
グイッと腕を引っ張られて後ろへと蹌踉めいた。その私の身体を支えるどころか引っ張った当人は、私が後ろへ転んだことを気にも止めずに、転んだ私の上に跨る。
サラリと銀色の髪が私の頬に触れた。
「ちょっと、何すんっ」
文句を言おうと開いた口に、ぬるりと強引に何かを差し込まれた。滑りをもったそれは私の舌を絡めとり容赦なく口内を動き回る。
「ちょ……んっ、んんぅ」
くちゅ。と水音が耳に届き、そこでやっと羞恥心が顔を出した。体温がグイッと上がり、耳まで赤くなっている気がする私は段々と酸欠気味になっているのか頭がぼぉ…としてきてよく考えられない。
「んっ…んんん……ふっ、はぁっ……はぁぁ、んっ！？」
やっと離れた唇に思いっきり酸素を求めて呼吸をすると、今度はガブリと首筋に歯を突き立てられた。
「いっ…」
たぁーーーーー。声にならずに消えたその言葉を目の前の男が知る由もなく、突き立てたまま強く吸った。まるで吸血鬼のその行動のようで、訳が分からずついにはフリーズしてしまう次第。
されるがままになった私を容赦なく噛んだり吸ったりした男はやがて飽きたかのように、ぱったりとそれらを止めて、少し離れたところにある高そうな椅子に腰を下ろした。
そして。無言。
話は冒頭に戻る。
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てる(プロフ) - 華緒〜KAO〜さん» わわ！ごめんない！書き直します！ありがとうございます！ (2018年5月22日 0時) (
レス) id: 1a0e49df6a (このIDを非表示/違反報告)
華緒〜KAO〜(プロフ) - 途中から蓮華 が蓮香 になってて 名前変換がされなくなっちゃってます(><) めちゃくちゃ面白くてドキドキして面白いので応援してます！ (2018年5月22日 0時) (レス) id: d5aee746e1 (このIDを非表示/違反報告)
てる(プロフ) - 奈楠さん» ありがとうございます！！悪役の中でジンニキは神ですw頑張ります！ (2018年5月18日 12時) (レス) id: 1a0e49df6a (このIDを非表示/違反報告)
奈楠(プロフ) - 凄く面白いです！！！ジンニキイケメンかよぉぉぉぉ！！更新頑張ってください！応援しています！！ (2018年5月17日 21時) (レス) id: f44adf4250 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：てる | 作成日時：2018年5月14日 21時
