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異世界転生説を捨てきれなかったが、道中沢山の石像を見てしまったから速攻で捨てた。捨てたけどもう一度拾いたくなった。なぜなら目の前で家を作っている少年という光景を理解できないからだ。
「ゼロから家の作り方知ってる君は本当に高校生？」
「嗚呼、正真正銘の高校生だ。」
「普通の高校生ってスマホとWiFi無いと生きていけないんじゃないの？あと、タピオカ。」
「The固定概念って感じだな。確かにスマホは便利だが…、俺はスマホ作るまでの過程の方に唆られるタチなんでなァ。」
変な子だなあ。科学オタクっていうのかなああいう子を。いやまあ、面白いけどね科学。ちなみにあの後魚をあげた為若干警戒を解いてくれた少年。名前を千空くんと言うらしい。ちなみに私の名前を聞かれたので悩んだ末に本名を教えた。新しい世界だし、新しい自分として真っ当に生きていきたい。
名前を教えた瞬間タメ口呼び捨てで、家づくり手伝え人手が足りねぇ、と言われた時にゃ少しびっくりした。私一応君より歳上なはずなんだけどね。そう言うと彼はキョトンとした顔して3700年経ってるから誤差だろ、と言い返してきた。確かにそれはそう。
「っし、後は明日だな。人が増えるだけでこんなに捗るとはな。じゃんじゃん蘇ってくれりゃ助かるんだがなァ。」
「蘇るんじゃないかな、現に私は蘇ったし。」
「そういやA。テメーはどこで復活した？」
「川の近く。動物とかがよく通るのか、獣道が何本か伸びてたよ。」
千空くんは顎に手を当てると「洞窟付近じゃねえのか」と呟いた。洞窟は見当たらなかったな。
「不思議だね石になるなんて。まるでメデューサの呪いみたいな。」
「呪いなんかじゃねぇよ。俺は絶対科学で解き明かす。」
その為にはまず衣食住の確保だな、と千空くんは干し草の上に寝転んだ。私も壁にもたれ掛かるようにして胡座をかく。彼はそんな私に「体痛くなんぞ」と忠告してくれたが、初対面の人間と肩を並べて眠れる訳もなく私は「大丈夫、慣れてるから」と笑っておいた。
「慣れてる、ねぇ」
それだけ言うと彼は目を閉じた。余程疲れていたのか眠りに落ちるのが早い。彼の頬は痩せこけ、手足には切り傷や豆などが多く見られた。
「子供が、そんなに苦労しちゃ駄目だ」
私はナイフと、彼の作りおいていた槍をひとつ拝借し夜の森の中へと足を踏み入れた。
「獣狩りじゃぁあああ！！！」
肉と服。今はそれが欲しいです。
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作者名：翔月 | 作成日時：2023年10月28日 0時
