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靴が無いため様々な物が足の裏に突き刺さるのを感じながら、歩みを進めること数時間。陽が傾き始めている。急がねば。



「何か変な臭いする…。」



動物で溢れかえっているこの地、何ら不思議なことはない。しかし煙に近づけば近づくほど臭いが増している気がする。つん、と鼻奥を刺すような刺激臭。まあ、働いていた事務所の毒煙に包まれたあの部屋寄りは全然いい匂いである。




「…あ」




ようやく辿り着いたそこには、作りかけの家と枝がくべられた炎があった。



人だ。誰かがここで生活をし始めているんだ。




辺りを警戒しながら火に近づく。温かく揺らめく魔性の暖色に手をかざしてみる。温かい。とうの昔に忘れ去っていた火の有難み。本来スイッチひとつで起こせるものでは無い。火打石なんてものも金で買えたあの時代。




「ちょいと、この火借りますかね。」




持っていた魚を近くにあった棒に、口からくねくねとジグザグに刺していく。最後に尾っぽ付近から棒の先端を出して火の近くへと刺す。美味しく出来るといいんだけど。






「あ?誰だテメー。」






背後から草を踏む音がした。小さく息をのむ音。そしてやたらめったら低い声。草を踏む音からして相手は小柄な男性。声帯が若い事や言葉遣いからして10代、もしくは20代前半程度である事が分かる。小柄さ故成長速度からして中学生…否発声的に声変わりしてから安定し始めた高校生とみたところ。




___勝てる。





「復活者か?見た目からして日本人だろーが、俺の言葉は通じるか?」



私は下に置いていた石器ナイフをとりつつ後ろを振り返る。じっとこちらを訝しげに見つめる赤眼と目が合った。よかった、高校生ならば裏社会の事も私のことも知らないだろう。
それにしてもこの少年1人だけでここまで作ったとは思えない。ほかに知識豊富な大人がいるのではないだろうか。




「君、1人?大人の人は居ないの?」



「辺り見てみろ。今のところ人類は俺とお前しかこの世に存在してねぇよ。」



「でも君だけじゃ家も炎もゼロから作るのは難しいんじゃない?警戒してるかもだけど、隠してもいい事ないよ。」




ニッコリと微笑んでみせれば、一般人には大抵これで脅しが完成する。さて、彼はどうかな



「あ?何言ってんだ。人間1人の力しか無かったからこんな中途半端なんだろ。」




おっと、まずい天才だ。

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作者名:翔月 | 作成日時:2023年10月28日 0時

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