灰色のぺトリコール【Dr.STONE】 (ページ2)

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「………まじ、？」

どうしよう。
まず初めに思ったことはそれだった。
長い長い眠りから覚めた感覚。ぼやける視界をゆっくりと慣らしながら辺りを見渡せば、生い茂る木々。緑豊かすぎる世界にはビルなんてひとつも見当たらない。
手に持っていたはずのライフルや腰につけていたトランシーバーも無い。

それより

「服が！！」

私は素っ裸だった。
起きる前までは確かに黒い服を着ていたはずだ。少しいい値段のする音を吸収する靴だって履いていた。それら全てがない。持ち物も服も何もかもがなくなっていた。

「これ、ひょっとして…今流行りの異世界転生、てきなあれなのでは…。」

つかの間の休息に電気書籍でよく読んでいた漫画。トラックに跳ねられた次の瞬間、異世界転生した社畜サラリーマンの主人公が慣れない世界に翻弄されつつも失っていた少年心と夢を取り戻し、新たな人生を歩むストーリー。
ともすると、裏の世界で生きていた私にも人生をやり直すチャンスが巡ってきたと言うやつなのではないか。

「とりあえず何かで身体を隠さないと」

近くの木から大きめの葉っぱ数枚と幹に巻き付く蔦を拝借し、それらを腰と胸部に巻き付ける。幸い川の近くで復活できた為、食事と水には困らない。

サバイバルはお手の物だ。
どんな環境でも生き抜き、確実に獲物を仕留めてきた。ある物で生きていける。それだけの技術は持っている。

河原に落ちていた岩に手のひらサイズの石を打ち付け割る。割れた破片を掻き集めてより鋭利に削っていく。そうすると大雑把な形のナイフのようなものが大量にできる。それらを手に取り川を見据える。

ゆらりと揺れる魚影。

五百メートル以上離れたビルから確実に動く獲物をヘッドショットが出来る私だ。この至近距離、この水の流れごとき

バシャンっ！！！！

魚を仕留めるに、なんてことはない。

「そういえば火がなかった…。」

火を起こすのは相当な技術がいる。何度かやったことがあるがついたためしがない。
詰みか…。そう思っていると川の下流の方で煙が昇っているのが見えた。

「だれか、いる？」

誰もいないと思っていたこの石の世界で、私は少し身構えた。自分の存在を知っている人間だったらどうしようか。新たな世界で今度こそ真っ当に清く正しく生きてやろうとする自分の妨げになるかもしれない。そう思い、石器ナイフ片手に川の流れに沿って下へ下へと降りていった。