第15話ー藤咲あかりー ページ17
「ふわぁ〜〜........」
「よく眠れたみたいだね。でも、二度寝はしないでね?せっかく七時前に起きれたんだから。」
「ん...。」
目を擦りながら時計を見ると6時40分を過ぎたところだった。学校でもない日にこんなに早く起きれたのか.....。
目を下に移すと璃埜が朝ご飯を作っていた。
もう暫く時間かかるかな...。着替えてくるか。
璃埜の部屋に行って今は一旦制服に着替える。どうせあとで私の家にも寄るんだし、そんなに困ることも無いはずだ。
ワイシャツにリボンにスカート。こいつらもしばらくは着れないのかと思うとなんとなくしんみりした。
でも何故かニットのベストを着た瞬間だけ声がした。
「こんな真夏にベスト着てあっつくないの〜?」
少し語尾を伸ばして不思議そうに聞いてくる間抜けな麻友の声。一瞬だけ、一瞬だけ聞こえた気がしたけど振り返っても誰も居ない。
これはただの思い出だ。昨年の夏に三人でした会話だ。
..........
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「ねぇねぇあかりちゃん!」
「なーにー?」
「こんな真夏にベスト着てあっつくないの〜?」
「えー?」
「あかりは寒がりだからベスト着ないと寒くて死んじゃうんだよ。」
「うそだー!!璃埜ちゃん嘘へたくそだよ!」
「ふふっ、冗談だよ。でも寒がりなのは本当。ね、あかり?」
「ん〜」
.......
「あかりー朝ご飯できたよー」
「んー」
少し長くぼーっとしてた....。
でもわざわざ思い出さなくてもその後に麻友はなんて言うかくらいは分かる。
「もうー!あかりちゃんってば〜!!」
聞きたくて.......、聞きたくてたまらない声が二度と聞けないことが悲しい。三週間前のあの瞬間からずっと寂しい。
心臓が締め付けられて「泣く」って思った。でも、我慢しなきゃ。璃埜に心配かけちゃいけない。
「あかりー?大丈夫?」
「んー、今行く。」
リボンを整えて台所に行くとテーブルの上には食パンとスクランブルエッグと味噌汁がのっていた。
「卵使っちゃわないと駄目になるからスクランブルエッグにしたけど大丈夫だった?」
「うん....全然平気。」
「そう....ならよかった。さ、食べよ。」
璃埜も悲しいのは当たり前だから私ばっかり心配かける訳には行かない。
朝ご飯を食べることで少し前向きになれるようでさっきよりも元気になれた。
「美味し...。」
「ふふっ、ありがと。」
これからはちゃんと美味しい朝ご飯を食べよう。そしたらちゃんと前を向ける気がする。
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作者名:詩雨・yuuhi | 作成日時:2018年8月10日 19時