第20話ー藤咲あかりー ページ23
バタンッ
私の後ろで璃埜が戸を閉めた。
思わず肩をビクつかせてしまった。
....今なら何を聞いても、何を見ても怖がれる自信がある。
まっすぐ伸びる廊下の一番奥にある戸がガラス戸で良かったのか良くないのか、それは分からないけど少なくとも先に覚悟を決められたのはいいことだろう。
透明が故に向こう側で起こってしまったことの予想はつくし、逆に“それ”以外はそっぽどのバカじゃない限りは思いつかない。
「開けるよ。」
いつの間にか私の先を行っていた璃埜が急に言うから肩がビクつく。
見ないわけにもいかないか.....。
「ん。」
音も立てず、扉が開けられる。
「うッ....。」
鼻を塞がないと息が出来ないくらいの濃い血の匂い。
薄暗い部屋の電気を付けようと手探りで見つけたスイッチを押しても反応がない。
もう、電気も通ってないのか....。
暗い部屋の中を見渡して見ると、部屋の端っこに置かれたテレビの画面に反射してソファーで隠れて見えていなかったものが見えた。
......私たちが一番見たくなかったものだ。
ついさっき見た腕とは違って、血を流す二人の人間はマネキンになんか見えなかった。
ソファーの向こうへゆっくり足を進めようとする。でも思ってた以上に震えは酷くてちっとも進めない。
でもそんな自分の弱さなんかを言い訳にしたくない。どんなに怖くて、悔しくて、悲しくて、逃げたしたくても目の前にあるものと向き合わなくちゃいけない。
.........麻友の分も。
必死になって自分を奮い立たせてソファーの向こう側に行く。
そこにはずっと心に閉まって忘れようとしていた現実の残酷さがあった。
......
...............
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「守って、あげられなくて.....ごめんね」
「朋のこと....頼んだぞ......俺たちがいなくても、ちゃんと、生きるんだぞ」
『愛してる』
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「.....ッ!」
全身を傷だらけにして、血まみれになってもなお穏やかな笑顔で二人手を繋ぐ夫婦は私の忘れてはいけない記憶と重なった。
隣に立つ璃埜は私の様子を察してかそっと私の手を握った。
手に感じた璃埜の温もりはあたたかくて手放したくないと思った。
この二人もそうだったのかな。
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作者名:詩雨・yuuhi | 作成日時:2018年8月10日 19時