スパイダー【ars M.A】 (ページ4)

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モページ4

「結局さ、まー君は元々あの彼女のことなんか好きじゃなかったんだって」

カズ君が、肉まんを頬張りながら吐き捨てた。

高校3年の俺達は、それぞれ部活も引退して。
軽音部だったカズ君とバスケ部だった俺は、同じ高校に通っていながらも一緒に帰るようになったのはここ最近。

そんな学校からの帰り道、コンビニで肉まんを買って食べながら家まで歩く。
こないだまではアメリカンドッグだった。

「えー...でも、好きだなぁって思ってたんだけどなー」
「もしめちゃくちゃ好きな女の子だったら、簡単に忘れらんないと思うけど」
「んー...」
「あ、それでどうだったの？冷静になったらやっぱり恋じゃなかったでしょ？ピアノの人」

肉まんの裏に付いてた薄い紙を俺の手に押し付けて、カズ君は口の中に残りの肉まん全部放り込んだ。

「会いたいなー...って、思ってるよ」
「ほんはほはぁひほへーはっへ」

何言ってるか分かんない。
首を傾げると、何故かお尻蹴られた。
理不尽。悔しいからやり返す。

「いってぇな！」
「そっちが先に蹴ったんでしょ！」
「お前がオレの有難いお言葉をちゃんと聞き取らないからだろ」
「あんな口パンパンで喋られても分っかんないよ！」

むうぅ...と道の真ん中で立ち止まり睨み合う。
でもすぐに馬鹿らしくなって、歩き出す。

「もっかい会わなきゃ、ちょっと判断出来ないなーって思ってんの」
「ふーん。だったら、会ってみたら良いじゃん」
「でも会う方法が無いんだって。学校とか知らないし」
「え？ってゆーか、まー君その子の家知ってんじゃないの？」
「だって、家行ったらストーカーみたいじゃない？」

俺が言うと、カズ君はンフッと笑った。

「まぁ確かに怪しいかもねー」
「...ダメじゃん」
「でも、それしか方法が無いなら仕方無くね？」
「.....そーだよね。うん、そーだよね！ストーカー上等だよ！」
「それは同意しかねるけど」

なんだよー！ってヘッドロックしたら、肘鉄された。
オエ、ってなる。

家の前まで帰って来たら、お隣さんからピアノの音がした。
カズくんちのおばちゃんは、ピアノの先生だ。
だからカズくんも、小さな頃からピアノを弾いていた。

「かーちゃんの生徒さん来てるみたいだから、まー君の部屋行っても良い？」
「うん」

俺と一緒に俺んちに来るカズ君の指が、聴こえてくる曲に合わせて動いてる。

「あら、おかえり」

玄関で俺達を迎えた母ちゃんに、カズ君は「ただいま」って笑った。