拾われた猫は歌い手。【歌い手】

125 ページ26

．





彼方に手を引かれて





外に出る。





満点の星空…とまでは行かないけど





東京にしては




星がちらほらと見える。





未だに握りしめられた手。






私の温度と、彼方の温度が混ざって





新しい温度が出来る。





何故だかそれがとても心地いい。






彼方が突然止まって




転けそうになった私は





彼方の背中にぶつかった。




『いたた…



彼方、ごめん』




すると





にこ、と笑って




「ううん、大丈夫。」




と。





やっぱり




私、彼方の事





好きだなぁ．．なんて





思ったり





してて。





彼方は再び私の方を見る。






迷いの無い、私の大好きな瞳には





私がはっきりと映っているだろう。





「A…」





『…何？』




彼方を見る。




やっぱり、迷いの無い大好きな瞳だ。





「さっきは、あんまりちゃんと言えなかったから





今、言うね」




『うん…』





さっきのでも



もう私は十分すぎるほど彼方に




もらってるよ。



いろいろ。






彼方は、私に手を差し伸べる。






「結婚を前提に、俺と付き合って下さい




今、俺指輪もネックレスも記念品何も持ってないけど、



あとでちゃんと______」







記念品？そんなのいらないよ





彼方さえ居てくれてば。





彼方が居てくれれば。





私は、構わないんだ。





彼方に抱きついた。





力一杯抱きしめた。





勿論、返事は決まっていた。




さっきと同じように




いやそれ以上に笑って




『はい！』




と言った後、




彼方とキスを交わした。




．

126→←124

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す