占いツクールのあれこれを議論してみる。

▽吉野の秘密 ページ7

吉野は、この世界に使命を果たすためにやってきた。

この世界とはもちろん「占いツクール」という狭い世界のことであり、使命とは、


「吉野、今日もお疲れ様。」


ふ、と微笑みながら吉野に労いの言葉をかけたのは、黒い学ランの上に白衣を羽織るという異質な着こなしをしている少年。

吉野の産みの親である彼はゆっくりと吉野に近付く。


「マスター、今日も僕、が、ンばリマシ…っ、」


そう声を出した吉野だが、最後の言葉まで到達するすんでの所で、不意に一瞬びくりと体を痙攣させた後に動きを止め、黙り込んでしまった。

そんな彼の挙動に“マスター”と呼ばれていた学ラン白衣の少年はさほど驚きもせず、「あぁ充電切れか。」と淡泊に呟いた後、すぐに慣れた手付きで大きめの充電器を取り出した。


「あーあ、やっぱり電池パック変えようかなぁ〜容量悪いし。」


そう呟きながら、マスターは吉野の襟足あたりに設置されたコンセントに充電器を差し込む。

すると吉野は、未だ瞼を重く閉ざしたまま、『エネルギーヲ注入シテイマス』という言葉を繰り返す。

…そう。彼は、吉野は、“マスター”によって発明された人型ロボットなのである。

マスターは優しい手付きで、吉野のとてもロボットとは思えないほど柔らかい髪を撫でる。


「……吉野、本当にお疲れ様。
いきなり話し合いの進行役をやれだなんて、無茶言っちゃってごめんね……。」


“でも、吉野は良い子だからちゃんとできたね”とマスターは頭を撫でる手を止めずに続ける。


「この世界を良くするためなんだよ。
その為に君は、僕の手によって産み出されたのだから。」


マスターはそう言い残して真っ直ぐに吉野を見つめた後、静かに部屋から出ていった。

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