17話 ページ17
次の日、登校するといつもの女子三人衆(山下、芽吹、東雲)の姿が見えなかった。
机もなくなっている。それでも周りの人は何も思っていないようで、まるでこれが日常だという様子だ。こういう現象には何となく心当たりがある。
神隠し、または境界に連れていかれたか。
本来は助けに行くべきなんだろうけれど、私がそんなことしてやる義理はない。自分に危害を与える存在を助ける意味などないからだ。
最近流れている噂的に考えて、原因は分かりきっているが、境界だし死ぬことは無いだろう。
朝礼が始まった頃、廊下に見知った影が駆けて行った。…と思えば私のクラスの扉を開けて、周りの視線など気にせずに、私の講義の声も聞こえていないのか、そのまま女子トイレへ向かった。
「花子くん!…ってあれ?居ない…。次は屋上よ!!」
「手…」
半ば引きずられるような形で着いていく。霊力切れでぶっ倒れたばかりでのこの激しい運動はかなりきつい。
「花子くん居ないね。そろそろ教室に…ってAちゃん!ご、ごごごめん!!昨日倒れたばっかりなのに辛いよね、ごめん!!」
「平気。」
手を振り払って、教室へ戻った。
「み、源さん…大丈夫?」
「うん。」
「その、えっと、ノート、写す?」
「いらない」
彼女はクラスメイトの一人でことある事に、例の三人衆共にゴミを投げつけてきていた。それなのにこの子、ひとりじゃ何も出来ないのね。いつもはあんなに楽しそうにしてるのに。
「柴田ちゃん可哀想…。」
「せっかく柴田ちゃんが話しかけてあげてるのに…少しは感謝しろっての。」
結局のところ、あの三人衆がいてもいなくてもクラスの形は変わらない。
「柴田さん。」
「え?」
「話し掛けてくれてアリガトウ。けど頼んでないからもう話しかけなくていいですよ。」
できる限りの笑顔を顔に貼り付けて語りかけた。どこかで男子が吹き出した。
恥をかいた怒りで顔を真っ赤にした彼女は人目も憚らず筆箱からカッターを取り出して私に刃を向けてきた。
さすがにまずいと感じたのか、周りにいた女子たちは彼女を必死に止めていた。普段から短刀(退魔用ではあるが)を扱っている私からしたら怖くないのだけど。柴田さんは私を睨みつけると渋々と席に着き、女子との会話を始めていたので、大事になる前に済んだ。
そのまま授業が始まり、休み時間に入っても先程の出来事からか、手を出してくる人は居なかった。今日は無事に放課後を迎えられそうだ。
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作者名:あめり | 作成日時:2020年1月18日 23時