16話 ページ16
「…!光!?」
「ザンネン、俺でした〜」
目を覚ますと、目の前に花子さんの顔がドアップで映った。
疲れているのか、それとも別の理由があるのか、いつものような笑顔ではなかった。どこか取り繕った感じ。
「手の手当はヤシロがしてったよ。いやァ〜。それよりも昼休みのAは凄かったなあ〜」
「…あれは花子さんが…」
「ごめんって。ほんっと、あの時はゾクゾクしたよ。目が据わってたんだからサ。霊力切れだったみたいだしそれは俺がイロイロしといたよ」
手の中にある短刀をぎゅっと握りしめた。昼休みは感情的になったうえ、光の前であんな姿を…。後で謝っておこう。
…昼休み?
「今は何時!?」
「夕方5時!ヤシロは帰ったヨ。」
驚きのあまり言葉を失った。
「…はぁ、」
ため息だけを零すと、もう何もかもが面倒になって八尋さんが持ってきてくれたのであろう鞄の中を漁って短刀の手入れ道具を取り出した。
今日は霊力をこめすぎちゃったし、負荷をかけてしまった。
ごめんね、という気持ちを込めて念入りに手入れをした。
「いたっ…」
ぱっくりとできた小さな傷は、まるでこの短刀からの仕返しのようでつい笑みを浮かべてしまう。
「Aってそんなカオするんだね」
「は?」
「何でもな〜い。」
おもむろに私の手を取れば、切れた指を口に含み、血を舐めとった。ヒュッ、と私が息を詰まらせて硬直していれば、彼は愉しげに微笑んだ。
ムカついたので鞘の方で頭を殴っておいた。
近くの水道で傷口を洗い流し、絆創膏を貼っておいた。
「花子さん。」
「ん?」
「私、怒ってる。何か言うことは?」
「え?何が?」
「状況が状況だったとはいえ人の弟に包丁を向けるなんて信じられない。しかも私の前で」
「…ン〜。でも俺実の弟に包丁向けてるしさ?」
めちゃくちゃな言い分にふつふつと怒りが沸き上がり、半ば彼を押し倒すような勢いで掴みかかった。
「あんたが自分の弟に刃を向けたとか言うのはどうでもいい。私には関係ないし。正直いって興味無い。それはあんたら家族の問題だし。あんたが実の弟に刃を向けようが、八尋さんに刃を向けようが、私はどうでもいい。
私が言いたいのは他人の家族巻き込んだのが許せない。それだけ。」
「…ごめん。そんな顔させるつもりはなかった。」
気がついていたら涙が溢れていて、逃げ出すようにして帰った。
去り際、花子さんはやけに楽しそうな笑顔を浮かべていた。
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作者名:あめり | 作成日時:2020年1月18日 23時