KING【ars M.A】 (ページ10)

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ある日の仕事終わり、社長の予定に会食が入っていた。

「風間ぽん、今日って奥さんの誕生日じゃなかった？」
「うん。そうだけど...まぁ仕事だったら仕方無いからね」

週末に食事でも行くよ、って風間さんが応える。

「良いよ、先に帰っても」
「え？何で？だって会食...」
「Aちゃん居るし」

社長が私を見て「ね！」と、確認を取る。

「私...ですか？」
「Aちゃん、第二秘書だったんでしょ？俺もこないだ知ったんだけど」
「いや、それは名ばかりの...と言うか、風間さんのお手伝いをしてただけで...」
「これも風間ぽんの手伝いだよ？奥さんの誕生日、ちゃんと祝ってあげて欲しいじゃん」

風間さんを見ると「気にしなくて良いよ」って困ったように笑ってる。

「私で良ければ」
「え、風見さん！ホントに良いんだよ」
「いえ！奥様のお祝い、して下さい。花束なんか買って帰るのはいかがですか？きっと喜ばれますよ！」
「風見さん...」

本当に良い人なんだな、風間さん。
ちょっと泣きそうな顔になってる。

「じゃあ、会食のお相手の情報をちゃんと伝えとくから、よろしくね」
「はい、お願いします！私はその場に居たら良いだけですか？」
「うん、今日の会食はほぼプライベートだから大丈夫」

良かった。
バリバリ接待とかだったらどうしようかと思った。

「お相手は二天堂の二宮社長なんだけどね」
「二天堂！？」

待って待って、二天堂って言ったらゲームに詳しくない人だって知ってるゲーム会社でしょ！？
誰でも一つは二天堂のゲームを持ってるって言われてる、あのモンスターみたいな会社でしょ！？
その社長！？

「ま...っ、待って下さい！私にはやっぱり荷が重すぎるのでは...！？」
「大丈夫だよー、ニノちゃんは怖くないから」
「怖く...ないとか...」

ってゆーか社長、二宮社長を『ニノちゃん』って呼んでんの！？

「本当に大丈夫だよ、風見さん。二宮社長は相葉社長と歳も変わらないし、可愛らしい気さくな人だから」
「可愛らしい...」
「うん」

あんな大会社の社長が可愛いって、何だそりゃ。

・

大きな不安を抱えながら、私は後部座席のドアを開けて社長が乗り込むのを待つ。

「今日は、こっちじゃなくて良いでしょ？」
「え？」

開けてたドアを、社長の手が閉め

そのまま彼は自分でドアを開き、助手席に乗り込んだ。

「あの...社長」
「どこに乗るのも、俺の自由だよね？」

ほらまた。そんな笑顔を見せるのはズルい。