Laundry【ars K.N】 (ページ34)

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そこが、私達部下に実は可愛らしく見えていたりする...という事は、絶対に社長に知られてはいけない。

洗面所をそっと覗くと、口笛を吹きながら髪を整えている。

口笛が出てしまってると言う事はきっと、『コインランドリーの君』の事でも考えているのだろう。
うちの社長、どうやら最近コインランドリーで出会った女性に恋をしているらしい。

クルンと振り返った社長が「行くよ」と、洗面所から出てきた。

暑いからやだ、と言って羽織らなかったジャケットと鞄を持って社長とホテルの部屋を出て

下で待たせてあったハイヤーに乗り込むと、後部座席の社長は「腹減ったー...」と呟く。

異国走る車から見える夜の街をトロンとした目で眺めてた社長が「J、何してっかなぁ？」と独り言のように言った。

J、とは社長の運転手。
本名は松本潤という純日本人なのだが、彫りの深い顔立ちからなのか社長が『J』と呼び始めた。

「旅行に行くと聞いております」
「どこに？」
「さぁ...バックパッカーで色んな所に行きたいと言っておりましたので」

社長が日本に居ない一ヶ月間。
運転手である松本に、社長は休みを与えた。
『いつもJは私用でも車を出してくれるから、お礼だよ』と。

そう。
社長は、良い人なのである。
自分の周りにいる人間には、本当に良い人であり良い社長なのだ。
敵にさえしなければ。

車は約束のレストランの入っているホテルに到着する。
このホテルに相葉社長は宿泊しているらしい。

「何でオレがアイツの泊まってるホテルに出向かなきゃなんないの？」

また少し不機嫌になった社長に「二宮社長のお泊まりになってるホテルの方が、格式は上でございますね」と囁けば、フンっと笑ってもう機嫌は直ってる。

「あ！ねぇねぇ、翔ちゃん！」
「はい」
「アイツも秘書居るよね！？美人秘書っぽくない！？女、好きそうだもんなー」

ンフフーと社長は楽しそう。

「社長、コインランドリーの君が居ながら...」
「それとこれは別でしょ？だって、美人秘書が出て来てもそれは相葉のモンだし」
「では、私は二宮社長の物なんでしょうか」
「えっ！？」
「確かに、身も心も社長に捧げてるつもりではありますが」
「ウハハッ！翔ちゃん、真面目な顔してやめてよ！」

ヒーヒー笑って、私の背中をバシバシ叩いて来る。
痛い。