Laundry【ars K.N】 (ページ33)

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『Invincible』番外・Sさん編ページ33

黙っていれば、まだ高校生かと見間違う程の童顔。
ひとたび喋れば、口から産まれて来たのかと疑いたくなる程の饒舌っぷり。
しかしその口から出て来るアイディアは、凡人の我々には考えつかないような物。

あぁ、敵わない...と無条件に思わせられてしまう。
この人には、敵わない。

我が二天堂社長二宮和也は、そういう人間だ。

ただ...

「ねぇ、翔ちゃん。やっぱ行かなきゃダメー？」
「当然でしょう。ドタキャン等、ありえません」
「オレ、アイツ好きじゃねぇんだって...」
「そんな事、知っております。だからと言って『好きじゃないから行きません』で通る訳が無いでしょう」

少し...いや、結構子供っぽいワガママが時々顔を出す。

いーやーだー！と、今もホテルの大きなベッドでバタバタしてる社長。

社長が何をそんなに嫌がっているのかと言うと、仕事でやって来たアメリカで予定されている会食。

その会食の相手、ゲームアプリ会社AIBER GAME社長である相葉雅紀氏とうちの社長は会いたくないのだ。

理由は社長なりに色々とあるのだろう。
まず、ゲームを扱う会社としてのライバル社であるという事。
そして、相葉社長が自分とはタイプの違う人間であるだろうという懸念。
そしてそして、その相葉社長が人当たりの良さそうな優男風であるという事。

「アイツは絶対に裏があるぞ...あの笑顔には裏がある...」

社長は常々、そう言っていた。

「社長、そろそろ支度をして頂かないと会食に遅刻してしまいます」
「...支度...、もうコレで良くね？良いでしょ」

ベッドからピョンと飛び降りて、ほら、と私に向かって両手を広げる。

「『それで良い』と、私が言うと本気で思っておられるんですか？」

社長はヨレヨレのTシャツにヨレヨレのハーフパンツ姿。
この人は、仕事が終わるとすぐにスーツを脱ぎたがる癖がある。

「フザけてないで、早く着替えて下さい」
「フザけてねぇし。会うのが相葉ごときなら、これでも上等だし」
「どなたに会うという前に、約束のレストランにドレスコードがございます」
「......チッ」

舌打ち。
本当に子供っぽい人だ。

ブツブツと文句を言いながら、私が用意していたスーツに着替えた社長に「髪も整えて下さい」と声を掛ける。

「わーかってるってば！」

私の横を通り過ぎて行く社長の頬が膨らんでいて、思わずプッと笑ってしまう。
本当に子供っぽい人だ。