Laundry【ars K.N】 (ページ26)

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「もっかい言ってよ」
「...やだ」
「何だよ、照れ屋さんだなぁ」

私の後頭部に顔をグリグリしてるカズが33歳とは...最近のおじさんは可愛いんだな...恐ろしい。

「でも私...全然カズのコト知らない。歳だって今知ったし...」
「オレだってAのコト、全然知らないよ？」
「私なんて別に驚く様な経歴もスペックも無いもん。ここで出してるのが全て過ぎて恥ずかしい」
「ンフフ、オレにはそれが可愛いんだけど」

私の髪を梳きながら、歌うように囁く。

「...カズがあんな大きな会社の社長だなんて...ビックリしたよ...」
「隠してた訳じゃ無いんだけどね」

よいしょ、って膝の上から私を立たせて

くるっと自分の方を向ける。

椅子に座ってるカズと向かい合って立つと、彼は上目遣いになってて

キューンって胸が少女漫画。

「でもAは、社長じゃなくてあんなダルダルな格好のオレを好きになってくれた」
「......」
「正直、オレをどんな奴だと思ってた？」
「...私と同じお貧乏なんだろうな...って」
「フハハッ！Aはお貧乏なの？」
「洗濯機買えない程度には貧乏です...」

...あ！洗濯機！！

「カズんちには何で洗濯機無いの！？洗濯機なんて何台でも買えるんじゃないの！？」
「何台もいらないでしょ」
「何で買わないの？」
「だって、服は全部クリーニングだもん。自分で洗うのタオルとか下着くらいだし、干すのも面倒だし」

クリーニング...やっぱ金持ちだった...。

「洗濯機、買ってやろうか？」
「えっ！？」
「もうここで会わなくっても、Aとは会えるようになる事だし」
「いや...でもさすがにそんな大きな物は頂けない...ってゆーか、カズの誕生日なのに私何もプレゼント無くて...」

...と言っても、社長を満足させられるプレゼントって何なんだかサッパリわからない。

「もう貰ってるよ？」
「え？」
「オレと恋人契約、してくれたでしょ？」

やっぱり若干キザで、ちょっと吹き出しちゃったけど

それ以上に嬉しくって、考えるより先にカズに抱き着いた。

「Aー。シンデレラストーリーじゃーん。プリティーウーマンじゃーん」
「フフッ。それ、自分で言う？」
「コインランドリーに王子様が居たね」
「それも普通自分で言うかなぁ」

お互いの身体をソッと離して、鼻が触れ合う距離で顔を寄せ合う。

「オレの最後のヒト、見付けた」

ランドリーの王子様が、私の鼻をキュッと摘んで

本当に王子様のような笑顔を見せた。