Laundry【ars K.N】 (ページ20)

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その土曜日も、初めてカズと出会った日と同じようによく晴れていた。

ここで洗濯するのも、もう慣れたもんだ。

時々会うおばちゃんとも仲良くなって、最近はよくお菓子を貰う。

カズも一緒になって昼から井戸端会議して、気付いたら夕方になってたなんて事もあった。

今日も先に帰るおばちゃんにキャベツ太郎を貰って、一人になったランドリーでモサモサ食べてた。

「キャベツ太郎！」

ハッとして入り口を見ると、カズがこっちを指差して「おばちゃんに貰ったの？」って訊いて来る。

「...うん...そうだけど...」
「オレも食いたい。食って良い？」
「...うん...、良いんだけど...え？どうしたの...？」
「何がよ」

いつもと同じように私の隣に座ったカズが、キャベツ太郎の袋に手を突っ込んでモサモサ食べる。

「え、今日仕事？土曜日なのに」
「あー、うん。まぁ、仕事っちゃ仕事」

カズは、土曜日お馴染みの服はもちろん髪もペッタンコなスーパーだらしない格好なんかじゃなくって

仕立ての良い、誰がどう見ても安物では無いスーツを着てる。

「...うちの会社の部長クラスでもこんな良いスーツ着てないよ...？」

そのジャケットに触ろうとして、自分の指がキャベツ太郎で汚れてる事に気付いて慌てて手を引っ込めた。

なのにカズは、キャベツ太郎を食べてたその指で高そうなジャケットをピラっと触って「着れりゃ何でも良いんだけどねー...」なんて言ってる。

「あれ？カズ、洗濯しないの？」

ふと、カズが手ぶらな事に気付いた。

「うん。今日はAにバイバイ言いに来ただけだから」

汚れた指先をペロっと舐めて、彼は静かに微笑む。

「オレ今日、日本を離れんのよ」

一瞬、言葉の意味が分かんなくて

何も言えずにいる私に

「オレが突然消えたら、A驚くかなと思って」

カズは、元カレの話を聞いてくれた時の様に椅子をズルズルと引っ張り身体を近付けて

緩く口角を上げる。

「......どこ...行くの？」
「ユーエスエー」
「US...J？」
「言うと思ったわ！」

ペチっとデコピンされて、泣きそうになった。

USJだと思わせてよ。
大阪旅行だと思わせてよ。

「A？」
「......」
「今からオレ無責任なコト、しちゃうよ？」

ほんの少しだけ、辛そうな表情をしたカズが

私に触れるだけの、優しいキスをして

「オレのコト、忘れんな」

本当に無責任な事を言って、もう一度

今度は私の唇を、その舌で撫でた。