Laundry【ars K.N】 (ページ30)

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「あっちが運命だと思ってるかは分かんないけどね」

Jがケラっと笑った。

「オレが運命だっつったら、運命なんだよ！」

いつだって、オレを『二天堂社長』だって目線で見るオンナとしか出逢いが無かった。
ビジネスパートナーにとゆー思惑で近寄って来る女性は、まぁ大いに結構。
思う存分頑張りたまえ、と思う訳。

ただ、オレを結婚相手に！って下心ミエミエで近寄って来るオンナが面倒臭くて仕方ないと感じていた。
頑張られても冷める一方。
オレの金と地位しか見えてないくせにー、って思う訳。

もうオレは一生素直な恋なんて出来ない。

結婚するとすれば、何かオレにとっての利益があるオンナと愛の無い契約をするんだろなーって考え始めてた。

そんな時に出逢ったんだ。

オレを『二天堂社長』だとは知らないあの子。

そんなの運命だとしか！
運命だとしか思えない！

ゆっくり時間かけて、オレのモンにしてみせる。

彼女にしたくて、シたい子なんだから。

車窓を流れる景色を見ながら、下ネタ控えた方が良いかな...なんて考えてると翔ちゃんが振り向いた。

「社長、今週末からのアメリカなんですが...」
「アメリカ！？」
「えぇ。ゲーム博覧会、まさかお忘れじゃないでしょうね」
「...おぉん、覚えてるよ？来週ってのをちょっと忘れてた…的な？」

オレが答えると「絶対忘れてたな」ってJが呟く。

「覚えてるわー！だって、超楽しみにしてたもん！仕事であんなヤバイ場所行けるとか、超役得じゃん！」

.....と、本気で思ってたんだよ？

この仕事が決まった時は。

ってゆーか、絶対にこの仕事だけは取ってやるって思ってたし。
日本のゲーム会社として、オレが行かなくてどーする！？って思ってたし。
その辺のプライドは、チョモランマ級だっつーの！

なんだけど、毎週2回あの子に会えるようになってその時間が楽しみ過ぎて

それが1ヶ月間も無くなると思ったら、その楽しみにしてた仕事ですらボイコットしたくなる。

「社長、まさか『ランドリーの君』に会えなくなるから行きたくないなんて仰りませんよね？」
「おおおお仰りませんよ！」

寂しいとかじゃないんだ。

今、あの子を置いてっても大丈夫か？って思ってんだ。

だって元カレから言い寄られたっつってた。
しかも、なーんか危うかった。あの空気感。

2度目は間違いなく押し切られる。

「ツバ、つけとくかー...」

ボソッと零れた独り言に、Jが「また下ネタ？」って言いながらハンドル切った。