恋唄-オフィスラブ-【all】 (ページ29)

今日:16 hit、昨日:1 hit、合計:305,120 hit

・ページ29

『お似合いですね』

「ありがとうございます
潤さんはどう思われますか」

潤「似合ってるよ」

白無垢にウェディングドレス

どちらも似合うからと

1回の結婚式で来させてくれるといった

こんなに虚しい誕生日は二度とない

自由でいさせてくれる代わりにと

しかるべきとしになれば婿を迎え入れる

政略結婚を約束された

10年も経てば気が変わると思ってた

相手だって誰か他の相手と
結婚するかもしれない

どの期待も裏切られ今日の日を迎えた

黒くてドロドロしたものが心を覆う

「じゃぁこれに決めます」

潤「もう少し見なくても大丈夫？」

「潤さんが似合うと
言ってくれたものですから」

演じてるとわかっていて
微笑み合う私たちの間に愛情どころか

たったひとつの情もない

プランナーと打ち合わせを終え

二人で乗り込む車の中は静まり返る

無駄に豪華なリムジン

いろいろ時代遅れな、いかにもな感じがして

吐き気が襲ってくる

小さい頃から贅沢を強いられてきたけど

わたしはひとつも慣れなかったし

楽しくもなかった

まるで全部ニセモノみたいで

間違って本の中に迷い込んだように

感情が追いついてこなかった

潤「食事でもして帰りますか」

「潤さんがしたければ」

息がつまる

潤「では、行きましょう
運転手さんお願いします」

常に敬語も気づいているのに

笑顔で話しかけるこの人が考えてることは

ひとつもわからない

潤「赤ワインとこのコースを」

『かしこまりました』

落ち着いた雰囲気のレストラン

漏らしたくなるため息をこらえる

「素敵な場所ですね」

潤「二宮さんも以前来てたようですね
カオリさんという女の方とこの席で」

思わず目を見開き席を立った私をみて

何か企んだ笑みを浮かべた

「…すみません、ちょっとお化粧室に」

潤「どうぞ」

逃げられない

その現実が呼吸を浅くした

「…助けて」

翔「毎度毎度、助けらんねぇよバーカ」

「なんで」

翔「いい感じのオネーサンとでぇと中
席に立った人がちょうど目線に入ったら
まさかのAだった」

「…トイレの鍵開かなくて我慢してて
ねぇ翔助けて」

翔「…小便我慢できないAを
ここから連れ出せばいいわけ？」

こんな所でそんな言葉を使ったのは
翔がきっと初めてだろう

「うん」

その言葉に頷いたのは私。