Clear-Crane-Crime 9th【arsM.A】 (ページ26)

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306.SAKURA-fieldの日常。ページ26

仕事は順調だ。

櫻井さんは確かに智さんに比べると厳しい部分もあったけど、朗らかで陽気な人だから休憩中の雑談は楽しかったし、やっぱり勉強にもなった。
そして一緒に過ごす時間が増えると余計に『何で彼女居ないんだろう？』って疑問が大きくなって来るけど、もう触れるのはやめておこうと思う。

二宮さんは、一瞬でスタッフからの人気と信頼を勝ち取った。
別に何をしたって訳じゃ無い。
外商時代に培ったであろう話術とあの笑顔で、簡単に人の懐に入り込んで行ってる。
人タラシとは、まさにこの人の事。

一度本人に「凄いですね」と言ったら「心理学、結構役に立つなぁ」って言われて、そう言えば大学では心理学部だったって言ってたなぁ...と思い出した。

二宮さんがどんなに人気者になっても私は彼の本性を知ってるから、ハートな目になってる女性スタッフには「ソイツ、ドSにつき要注意！」って警告してる。心の中で。

そして、そんな彼の本性を知ってる人がもう一人。

ある日の出勤前に寄ったコンビニでさくらんぼ味のキャラメルを見付けた私は、智さんの部屋に届けに行った。
そしたらドアを開けた二宮さんの背後で何故だか悶絶してる智さん。

「...あの、智さんはどうされたんですか？」
「え？オレがキャラメル補充してやったから喜んでんじゃない？」

「ばかぁぁぁ！」と智さんが涙目で叫んでる。
ただ事では無い！と思った私は部屋に入ってソファに倒れ込んだ智さんに「何かされましたか！？」って訊く。

「おい、でも子！最初からオレが何かしたみたいな言い方すんな！」
「だっておかしいでしょ！こんなに苦しんで...何したの！？毒でも盛った！？」
「お前はオレを何だと思ってんだ。暗殺者か。ゴルゴか」
「智さん、どうしたんですか？」

丸くなってる背中をさすりながら尋ねると、智さんが拳にした片腕を私の顔の前に伸ばしてパっとその拳を開いた。
掌の上には、紙に包まれたキャラメル。

「え？」
「......あげる...」
「あ...ありがとうございます」

本当にどうしたんだろう？と思いながら、渡されたキャラメルを口に入れる。

「......うっ！？」

智さんが顔を上げて、ニマァと笑った。

「凄い味でしょ？ジンギスカンキャラメル。そんなの混ぜてんだよ？あの秘書。サイテー」

これは...刺激的過ぎる...

爆笑してる二宮さんを一睨みして社長室に戻った私が、櫻井さんにそのキャラメルをあげたのは

まぁ想定内でしょう。