Clear‐Crane‐Crime 7th【ars M.A】 (ページ31)

今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:1,745,415 hit

241.ZOMBIE。ページ31

「でも、ナースだと派手な仮装になるからダメか」

派手仮装な人達の間を歩きながら、二宮さんが呟く。

「誰もオレ達も仮装してるなんて思わないだろーねー」
「フフッ、そうですね」

傍から見ると私たちは、単なる仕事帰りの二人に見えるだろう。

「来年は何しよっかなー。翔ちゃんのWi-Fiすっげぇ面白かったからなー、アレに勝ちたい」
「そこも勝負？」
「もちろん」

ンフ、と笑った横顔はやっぱりどちらかと言えば中性的で美人。

「あっ！そうだ、二宮さん」
「ん？」
「雅紀くんに押し倒されて、何されたんですか？」
「...お前ー...思い出させんなよ...」

ハァァ...と大きな溜息。
俯いた弾みでズレた眼鏡を、手で挟むようにして持ち上げる。

「そんなに際どいコトされたんですか？」
「でも子、笑いを堪えてんのバレバレだかんな」
「フフッ」
「...知りたいの？」
「知りたい！」

もう一度、ハァァ...と溜息。

「別にそこまでのコトじゃ無いんだけど」
「はい」
「ただ、オレがそれ苦手ってゆーか弱いってゆーか...」
「前置き長いなぁ」
「フハハッ！でも子ってホント、生意気」

二人でケラケラ笑ってると、ゾンビの仮装をした集団とぶつかった。
その拍子にフラっとバランスを崩すと、二宮さんが腕を引っ張ってくれて転けずに済んだ。

「あ、すみません！」

ゾンビの一人が私達に謝る。

「ううん、こちらこそゴメンね」

ニッコリ微笑む二宮さんに、女の子ゾンビ達が「カッコイイ！」なんて盛り上がってる。
二宮さん、絶対に聞こえてるくせに。
何でも無いよーな顔しちゃって。

「嬉しいくせに」

ゾンビ達と別れて歩きながら言うと

「お生憎様。あんなの言われ慣れてんだよ」

って、目を細くしてこっちを見る。
言われ慣れ...ててもおかしくないか。悔しいけど。

「舌をね」

二宮さんがそのまんまの表情で急に言うから「はい？」と応えると

「耳に突っ込まれたの」

淡々と話す。

「...え？」
「何されたか？ってでも子が訊いたんでしょ」
「...あぁっ！雅紀くんに！？」
「そう。マサキくんに」

耳に舌...うわぁ.....やりそう。

「オレが耳弱いの知っててアイツ...」
「ねぇねぇ！それだけじゃなくて、何か言われたんですよね！？」
「それは絶対教えない！」
「何でー！？教えて下さいよー！」
「やだっ！」

イーッて顔して、二宮さんがスタスタと歩いて行くから

「二宮さーん、教えてよー」

笑いながら、追い掛ける。