Clear‐Crane‐Crime 7th【ars M.A】 (ページ30)

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240.選ぶ権利。ページ30

雅紀くんもベースに戻って来て、暫くみんなで飲んで喋って

思い出したように時計を見ると、そろそろ終電の時間だった。

「そろそろ私、帰らなきゃ」

隣に座ってる雅紀くんに言うと「じゃあ、下まで送るよ」と、私の荷物を持って立ち上がった。

「あー、オレも帰る」
「え？ニノ帰っちゃうの？」

智さんが訊くと「明日、朝イチでお客様んとこなの」と答えながら、ヨイショと立ち上がる。

智さん、櫻井さんと「また、月曜日」と挨拶し合って

「ねむー...」とアクビをしてる二宮さんと「仕事大変だね」って、彼の頭をポンポン撫でながら笑ってる雅紀くんとベースを下りて

カウンターで忙しそうにドリンクを作ってる潤さんに挨拶してから、MIYABIを出た。

「Aちゃん、気を付けてね」
「うん、ありがと」

雅紀くんが持ってくれてた荷物を受け取る。

「ニノ、駅までAちゃんをよろしくね」
「はいはい」
「絶対に襲わないでよ？送り狼なんて許さないからね？」
「こっちにも選ぶ権利がありますー」

「その台詞、そのまんまお返しします」と二宮さんに言えば「ホンット生意気」って笑われた。

「じゃ、また明日」
「お昼過ぎ位で大丈夫？」
「寝てるかもしんないから、出て来なかったら電話して？」
「うん、分かった」
「待ってるね」

キュッと、軽いハグ。

「バイバイ！」

雅紀くんが、軽やかに階段を駆け上がって行く。

「あ...二宮さん、お待たせしました」

日本人が人前でハグなんかしてんなやー！とか言われるだろうと、ちょっと覚悟して二宮さんの方を見たら

彼は、こっちを見てなくて。
ポケットに両手を突っ込み首を左側に捻ったまま、まるで時間が止まってしまったみたいにジッと何かを見ている。

思わず私も二宮さんが見てる方向に目をやってみるけど、そこには派手な仮装をして楽しそうに騒いでる人達の姿しか無い。

「二宮さん？」
「...あ、わりぃ。行くか」
「何見てたんですか？」
「え？...あー、あのナース。超えろいなーって」

二宮さんが指差した先に居たのは、ミニスカナース。

「お前、ナースしたら相葉さんとセットだったのにね」
「衛生士さんじゃなくて？」
「アイツの仮装、外科医なんでしょ？だったらセットはナースじゃん」
「あ！そっか！フフッ、さっき雅紀くんも『衛生士さんだったら』って言ってた」
「おいおい、お前らトイレで何の話してたのよ」

またニヤリとした二宮さんから、慌てて目を逸らした。