Clear‐Crane‐Crime 7th【ars M.A】 (ページ2)

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212.ドレスコード。ページ2

ふと、周りを見ると女の子どころか全員が浴衣だって事に気付いた。

「何か、示し合わせたように皆さん浴衣ですね。それだけ気が合うって事なのかな」
「え？ドレスコードが浴衣だからだけど」
「え？ドレスコード？」
「え？だから、Aも浴衣なんじゃないの？」
「ドレスコードなんて話、聞いてませんけど...」
「うっそ！俺、言ってなかった！？」

うっそ、そんな話聞いてませんけど。

って事は、もし今日MIYABIで浴衣ナイトが無かったら...。
私一人、平服を着て来てしまってた事になる。

「ちょっと櫻井さーん...」
「アハッ！ごめんごめん！」

顔の前で両手を合わせて謝ってるけど、凄い笑ってる。

「櫻井さんって...」
「何だね？」
「あ...いえ、何でも無いです」
「何だね、言ってみたまえ」
「アハハッ！何で突然、社長口調なんですか！」

二人で笑ってると、逆隣に智さんが座った。

「このスパークリング、うまいね」
「やっぱり？智くん好きそうだなと思ったんだよね」
「さすがだね、翔くん。おれの好み100％理解してる」
「でしょ？何年の付き合いだと思ってんの」

私を挟んで、そんな会話。

「あ、私お邪魔ですね？」

ムフフ、となりながら立ち上がろうとすると

智さんに手首を掴まれた。

「何でAちゃんが邪魔なの」
「あ...えっと」
「また、おれと翔くんが付き合ってるかと思ったーとか言うの？」

ニコニコしてる。
クルっと櫻井さんの方を見ると「俺は生粋の女好きです」って言ってる。

「女好きなんですか」
「女好きです」
「でも彼女居な...」
「うっせぇ！」

口の中に白ブドウ突っ込まれた。

あ、美味しい。
これ、あれだ。
シャインマスカット。

「美味しい」
「だろー？葡萄園から直接、お取り寄せしてんだよ」
「...セレブ...」
「とか言って、ホントは友達の実家ってだけ！」

だから安く買えんの、って言う櫻井さんが教えてくれた値段はスーパーでよりずっと安くて思わず「ズルい！」と言ってしまった。

その間も、私の手首は智さんに掴まれたままで

しかも手首ごと智さんの背中の後ろに隠されてるから、逆側の櫻井さんには気付かれてない。

離して貰おうと少し手を動かしても、余計にギュっと握られる。
でも

「あ、ドレスコード知らなかったのに何でAは浴衣で来たの？」

櫻井さんにそう訊かれ

「あ...今日MIYABIで浴衣ナイトってイベントがあって」

そう答えた瞬間、智さんの手の力が緩まった。