Clear‐Crane‐Crime 5th【ars M.A】 (ページ32)

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走る車内、時々知ってる曲が流れる。

「これ知ってる」と言えば、「ナイトで使ったからかな？」って応えてくれる。

音楽に合わせてハンドルの上でトントンとリズムをとる指先。

たまに唇を尖らせて、口笛。

サングラスの隙間から見える目が、たまにこっちを向いて微笑む。

その度にいちいち照れるけど、照れてないような何でも無い態度をとるのは結構大変。

「ねぇ、先生」
「ん？」
「私も先生のご両親にご挨拶したいです」
「えー？」

先生が、フフッて笑う。

「それAちゃん、親父に会いたいだけじゃないの？」
「あ、バレました？」
「じゃあダメー！初恋の人をにわざわざ会わせるなんて、ゼッタイやだ」
「先生のお父様じゃないですかー！」

私も笑うと、先生は「ウソウソ」ってこっちをチラっと見た。

「たまに島から帰って来るから、次に帰って来るって連絡あったらAちゃんに会わせるよ」
「...ホントに？」
「俺もちゃんと親父達にAちゃんを改めて『彼女』だって紹介したいし」
「......」

大好きだった初恋の相葉先生(お父様の方)に会えるのが嬉しいのは勿論、それ以上に彼女として紹介して貰えるのが嬉しい。

「親父、ビックリするだろうね」
「私のコト、覚えてるかなぁ...」
「自分が診た患者さんの事は何でも覚えてるよ、あの人は」

優しい横顔。

やっぱり、親子なんだ。
似てるな...って思った。

車は、遊園地の駐車場に着く。

外に出ると、やっぱり暑い。

「あちー！」

まだ車から降りただけなのに、先生はプルオーバーの裾を摘まんで身体の中にパタパタと風を送り込んでる。

駐車場からも見える大きなジェットコースターを見て「フゥゥ！」って楽しそうに声を出す先生が、こっちを見ずに手を繋いで来た。

「あれ、乗るでしょ？」
「あ...はい！」

あまりにも自然な流れが、何だかくすぐったい。

デートみたいだ...って思ってすぐに、デートなんだ！って思い出す。

園内は日曜日って事もあって、結構お客さんがたくさん居る。
何に乗るにも、そこそこ並ばなきゃいけない位。

「絶対に乗りたいから、あれから並ぼ！」

先生は一直線に、さっきも見た大きなジェットコースターに向かって行く。

60分待ちだったけど並んでる間、先生が鼻唄で出すイントロクイズをしてたらあっとゆー間。
全然分からなくて大笑いした。

コースターも怖いはずなのに、先生が隣で爆笑してるから私もつられてちゃって

降りた時には顔を合わせてまた笑った。