Clear‐Crane‐Crime 5th【ars M.A】 (ページ27)

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167.観察眼。ページ27

それに気付いたのは、その日の午後の仕事に取り掛かろうと思った時だった。

何気無くスマホでLINEを確認すると、新しい友達が追加されていてチェックしたら

「...あ...」

『雅紀』って名前と、アイコンには見た事のあるヘッドホン。

そうか。
電話番号で勝手に追加されるってゆーあの機能だ。

仕事中なのに、一瞬で胸がキューってなる。
こんな事で喜ぶとか、女子高生か！って感じだけど嬉しいんだから仕方ない。

心無しか、そこからの仕事はいつもよりもはかどった気がした。
彼氏出来立ての女なんて、いくつになっても単純だ。
単純で、幸せだ。

電話帳に続きLINEにも先生の名前が増えただけでも嬉しかったのに、その日の夜にはメッセージが届いてまたベッドの上でのたうち回った。

『LINEにいつの間にかAちゃんが居た！』

そのメッセージだけで、先生の顔が思い浮かぶ。

『私のLINEにも、いつの間にか先生が居ました(^-^)』

そう返事したら、既読がついて。
先生が同時にスマホ見てるんだなって、実感して。

先生の送ってくるスタンプが、何かちょっとチョイスが変だったりして。
それも、可愛く感じちゃったりして。

やっぱり、幸せだなぁ...って思いながら眠りに就く。

そしてきっと私は、幸せな夢を見る。

・

「Aちゃん、何かあった？」

金曜の休憩中、今日は外に出ようってやって来たうまうま亭で向かい合ってご飯を食べてた智さんに突然言われた。

「...え？何でですか...？」
「んー、朝からずっと口角上がりっぱなしだからねぇ」
「うそっ！」

思わずお箸を持ったまま自分の口角を隠す。

「やっぱり何かあったんだ」

魚の煮付けを綺麗にほぐしながら、智さんはチラッと私を見て

「相葉ちゃん？」

それだけ言うと、目を逸らさない。

「え...っと...」
「相葉ちゃんのコト、好きでしょ」
「.....」
「もしかして、付き合う事になった？」

少し首を傾げた智さんが、ほぐした魚をパクッと食べる。

「あ...はい、そうなんです」

別に隠す事でも無いし、正直に答えると

「そっかー、良かったねぇ」

智さんは、柔らかく微笑んだ。

「相葉ちゃん、優しいもんね」
「優しい、ですね」
「大切にして貰いなよ？」
「アハッ、何か照れ臭いですね」

意外と智さん、観察眼鋭い。
流石だなー、仕事出来る人は違うな。

私はそんな事を考えながら、チキン南蛮を食べて

やっぱり智さんは私のチキン南蛮を、ひと切れ食べた。