Clear‐Crane‐Crime 5th【ars M.A】 (ページ22)

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162.これが罰ゲーム。ページ22

身体をテーブルに乗り出すようにしてた先生が、フって笑って

「罰ゲームね」

そう言って、ストンと自分の椅子に座り直した。

こんな甘いキスが罰ゲームなんて、私わざと「でも」って言っちゃいそう。
いやでも、わざと言ってるなんてバレたら恥ずかし過ぎる！
今まで以上に「でも」に気を付けなきゃダメだ...

「ねぇ、Aちゃん」
「はい」
「今度どっか行こうか」
「...えっ、どっか...？」
「うん」

水を飲んだ先生が「デート、しよ」って微笑む。

「デート...！」
「日曜だったら俺も一日休みだし。Aちゃんも仕事、休みでしょ？」
「はいっ！休みです！」
「どこ行きたい？」
「どこ...どこでも...あっ、えっと」

どうしよう。
『どこでも良い』が一番困るって分かってるのに、一気に何か色んな事が起き過ぎて上手く考えがまとまらない。

「フフッ、今すぐ決めなくっても良いよ？車は出せるし、どこでも行けるからね」
「はい...」
「じゃあ、今週の日曜はデートね？」
「...はい！楽しみ...」

ウハハ！って笑った先生が私の頭をクシャクシャって撫でた。

「ホント可愛いね」
「えっ！？」
「初恋が実るとか、俺めっちゃ少女漫画みたい」

本当に少女漫画から出てきたような笑顔で、先生は立ち上がりまた寝室らしき部屋に入って行って

出て来た時には、Tシャツの上にデニムシャツを羽織ってた。

「明日も仕事だよね？」
「あ...はい」
「じゃあそろそろ帰んなきゃね。帰ってからも女の子はお風呂入ったりお肌のお手入れしたり忙しいでしょ？」
「フフッ、そんな事も無いですけどね」
「送ってくよ」
「え...大丈夫ですよ！」

私の鞄を持って階段を降りて行く先生の背中にそう言ったけど

「彼女を一人では帰らせられないよ」

なんて振り向きざまに言われて、胸キュンし過ぎて階段踏み外しそうになる。

「あ...でも、鞄は自分で持ちます！」
「そう？」
「はい」
「じゃあ、はい」

鞄を受け取って、ふと床を見ると

「あ...」

二階に上がる前に落とした漫画が、そのまんまの形であった。

しゃがんで漫画を取ると、ヒラリと紙切れが漫画の間から落ちる。

しおり？と思いつつそれを拾うと

『いつ、気付いてくれる？もしかして、気付かない振りしてる？』

その紙には、先生の字でそう書かれてあった。

「...え...これ...？」

先生に見せると、彼は「さ、帰ろっか」ってクシャっと笑う。

そのメッセージについては何も言わず、先生はドアを開けた。