Clear‐Crane‐Crime 4th【ars M.A】 (ページ26)

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131.味方に変える。ページ26

そこにランチが運ばれて来る。

チキンソテーランチと、ジェノベーゼ。
それから智さんが追加で注文したシーザーサラダの単品。

それらがコトン、コトンとテーブルに並べられた。

「Aちゃん」
「...はい」

智さんが頬杖をついて、こっちを見る。

「Aちゃんがヘマしちゃったのは、今日が初めてでしょ？」
「......」
「二回目が無ければ良いんだよ」
「......はい...」
「Aちゃんみたいに、すぐにしっかり反省するのは良い事だよね。それに」

水の入ったコップを手にした智さんは、それを口に付ける一瞬前に

「おれ、そーゆーAちゃんが好き」

ちょっと口の端を上げて、言った。

コクン、と水を飲み込んだ智さんの喉仏が動く。

「......え？」
「ん？」
「あ...いえ...」
「だって反省しないよーな人とはお仕事したくないでしょ？ってゆーか、出来ないもん」
「あっ...あぁっ！お仕事...」

ビックリしたー...
痛い勘違いするところだった...。

ビジネスパートナーとして、って事だよね。
...パートナーなんて、烏滸がましくて言えないけど...。

「今後のAちゃんに、益々期待します」
「肝に銘じておきます」

クスっと彼が笑う。

「でも、切り替えも上手にならなきゃね」
「切り替え...ですか」
「失敗も味方にして力に変えたら良いの！ほら、切り替えてご飯食べよ」
「...はい！」
「何でも味方にしちゃえば強いよぉ」

智さんがフォークをシーザーサラダの中に突っ込むと、ワサっとレタスが付いて来た。

それを口に頬張る智さんを見て、私も自分の前に置いてあるジェノベーゼにフォークを入れた。

「Aちゃん、何かデート気分だねぇ」
「またまたぁ」
「ふふっ、ホントこの店はオシャレだなぁ。誰がデザインしたんだろう」
「フフッ、オシャレですよねぇ。どうやら大野智というデザイナーさんらしいですよ」
「おぉ！ソイツは天才だな！？」
「そうですね、絶対に天才です！」

天才じゃないよぉ！って、自分で言い出したくせに照れてる智さんがチキンソテーを食べる。

「うんま...Aちゃん、これ食べてみ！」

興奮気味にチキンを指差すから、「失礼します」と一切れ貰う。

「...美味しい！」
「ね」
「はい」
「あー、しあわせ。これ、ずっと食ってられる」

本当に幸せそうにほっぺをモグモグ動かしながら目を細める智さんは

やっぱり猫みたいで、見てると心がちょっと和んだ。