Clear‐Crane‐Crime 4th【ars M.A】 (ページ25)

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130.電話。ページ25

智さんの言ってたように、一駅分くらい歩いた所にそのお店はあった。

「あ...ここって...」

私が呟くと、彼は「あ、知ってた？」って笑ってお店に入って行く。

黒基調のドッシリとした店構えだけど、オフィス街から続いてる遊歩道に面したテラス席が木陰になっていて気持ちが良さそう。
大きく開け放たれた鉄製の扉の奥には、ガラスのドア。

バイトらしい女の子に席へ案内して貰って、向かい合わせで座りメニューを開く。

「平日だからお得なランチやってるー」

嬉しそうな智さんを見て、思わず吹き出してしまう。
そんなに食へのこだわりは無さそうだなーなんて思ってたけど、こっちかなー...これも食いてぇなー...ってブツブツ言ってる。

「智さん、ここってSAKURA-fieldが手掛けたお店ですよね」

入社してから、自社の事はちゃんと調べた。
ここも、いつか来ようと思ってた店だ。

「うん、そう。おれがデザインしたお店。オッシャレー！」
「フフッ、ホントに素敵です」
「この辺りで一番オシャレだと思うなぁ、おれ」

冗談っぽくクスクス笑った智さんは「チキンソテーランチにしよ！」ってメニューを指差した。

オーダーした後、智さんは何か思い出したようにスマホを出して耳に当てる。
誰に電話...？と思ったけどあんまりジロジロ見るのもいけないと、店内を見渡してみる。

「あ、もしもし。翔くん？おれー」

...そうだ！櫻井さんにミスの報告と謝罪をしなきゃいけないんだった...！

「打ち合わせ明日に変更してたの忘れてて、今日ストーム行っちゃった」

電話の向こう側で何か言ってるだろう櫻井さんに「ごめーん！アハッ！」なんて、笑ってる。

「智さん、智さん！」

小声で呼ぶと、「何？」って目をするから「代わって下さい」とヒソヒソ。

でも彼はニコっとして目を逸らしただけ。

「うん。大丈夫だよ、ちゃんと謝ったし怒られなかった。...ふふっ、心配しないでよぉ」

私がちゃんと先に気付いて櫻井さんに連絡しなきゃいけなかったのに...。
もう、どんどん落ち込む。

「じゃあ、昼飯食って帰るねー」

バイバーイ、って軽く言うと彼は電話を切った。

「すみません...私が電話しなきゃいけなかったのに...」
「ううん」
「もうホント...、どうして私こんなにダメなんだろう...」
「Aちゃん？」
「ごめんなさい...」

ミスした上に、その事に動揺しちゃって後始末すらしっかり出来ない自分に嫌気がして大きな溜息が出た。