8-9.正体見たり ページ9
(!)イナズマイレブンSD、剣城くんと天馬くんのキズナボイスのネタバレを含みます。
−−−−−
「A、終わったか?」
廊下から剣城くんの声がした。
身体の力が抜け、いつの間にか止めていた息を吐いた。
「剣城くん__」
返事をしようと口を開いたが、私な声はまたもあの音にかき消された。何かがうごめくような音がシャワーの個室の方から聞こえた。思わずその場にしゃがみ込む。
「うわっ!?」
「おい、A? どうした?」
剣城くんが扉を開ける。彼はしゃがんでいる私を見て、驚いた様子で駆け寄ってきた。
「何かあったのか」
「あ、あの……音が__」
私がそう言うと、彼は怪訝な表情をした。呆れられることは重々承知で、シャワーの個室を指差し、言葉を加えた。
「個室の方から、音がして……何か動いてるような」
「また猫か?」
「わ、わからない……」
話していると、またシャワー室の方から音がした。闇の中で何かが、暴れている。その頃には、私も音の正体が生き物だと確信していた。
剣城くんは、まず私を休憩スペースの椅子に座らせて、シャワー室の照明をつけた。個室の扉は地面から数十センチほど空いているのだが、何かの影が動いているのが隙間からわかった。
「何かいる……」
幽霊ではなかったことに安堵しつつ、音の原因を何とかしなければならないことに辟易した。
剣城くんは慎重に、影の見える個室へ近づく。慌てて立ち上がる私を、彼は手で制した。
「あ、危ないよ。私も何か……」
「お前に何かあったら俺が怒られる」
大人しく座っていることにした。
個室の扉に手がかけられる。少しだけ開けると、影はそれに反応したのかわずかに動いた。
剣城くんはこちらを一瞥すると、一思いに扉を開けた。
何を考えているのかわからない目が、きょろきょろと辺りを見回している。閉じられたままのくちばしから、クルクルと鳴き声が聞こえていた。
「鳩だ……」
換気のために開けた窓から、ひゅう、と涼しい風が入ってきた。
.
そのあと、剣城くんが鳩を窓の近くまで追い詰めると、鳩は自ら窓の外へ飛んでいった。暴れられたらもっと大変なことになっていただろう。スムーズに逃がすことができて、私は安堵の息を吐いた。
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春間(プロフ) - 爈久さん» 初めまして。コメントありがとうございます! 嬉しいお言葉をありがとうございます。今後も楽しんでいただけるようがんばります! (2021年2月7日 18時) (レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
爈久 - はじめまして!初めてのコメント失礼します。1話1話の話の展開がオリジナルで書かれていらっしゃるので、大変読み応えがあり ホールケーキ1個分食べた満足感があります。笑 更新の通知を楽しみにしています。 (2021年2月7日 3時) (レス) id: 49ee71ecf2 (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - こころさん» コメントありがとうございます。励みになります! (2021年1月25日 14時) (レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
こころ(プロフ) - 面白かったです 続き楽しみにしてます更新頑張ってください (2021年1月25日 1時) (レス) id: eb962bcdd2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春間 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/april_hrm
作成日時:2020年11月1日 14時