10-31.追い風 ページ31
「＿＿ゴーーーーール！！！ Aが化身を発動し、シュートを決めました！！ 得点は３対４！！」
身体が痺れるような歓声が上がる。
３対４になった得点板を視界に入れた瞬間、脚の力が抜けてその場に膝をついた。青龍は一度引っ込んだようだ。膝を掴んだ手が震えている。
信じられなかった。化身を出したことも、私がシュートを決めたことも。観客席から私の名前を呼ぶ声がたくさん聞こえて、それが現実だということをかろうじて繋ぎ止めてくれている。
「A……」
ハッとして顔を上げると、天馬くんが地面に手をついて起きあがろうとしていた。慌てて駆け寄って手を貸すと、天馬くんは何とか立ち上がることができた。
「天馬くん、大丈夫？ 大丈夫じゃないよね、怪我して＿＿」
顔を上げた天馬くんの目はきらきらしていて、私は思わず黙った。身体はボロボロなのに、その表情は明るく、希望に満ちていた。
「すごいよ、A！ 化身を出したんだよ！」
「う、うん。あの、天馬くん、大丈夫なの？」
「平気だよ。Aがこんなにがんばってるのに、じっとしていられないよ」
「でも……」
「きっとみんなも同じ気持ちだと思うよ」
天馬くんの言葉に周りを見ると、剣城くんや神童先輩たちも少しずつ立ち上がっていた。さすがに表情は苦しげだが。
「みんな、点差は縮まってる！ 絶対逆転しよう！」
「おおっ！」
その時、どこからかやってきた追い風が私たちの頬を撫でていった。
.
実幡のボールで試合再開。ホイッスルが鳴るや否や、実幡の選手は怒りに震えながら叫んだ。
「俺たちは負けるわけには行かないんだ。＿＿もう二度と！」
その言葉から、表情から、声色から、実幡のみんなの気持ちが伝わってくる。サッカー選手なら、きっとみんなそうだと私は思う。＿＿どうしても、勝ちたい。
攻め上がってきた相手選手に、神童先輩が向かっていく。
「アインザッツ！」
先輩はタイミングを見て、すばやくボールを奪った。続いて神のタクト
「天馬、行け！」
「はい！」
天馬くんが巧みなドリブルで相手選手を抜き去っていく。風のようにすり抜けて、ボールを奪う隙を与えない。
「そよかぜステップ！」
ふわりと吹いた風が、泥だらけの頬を拭っていく。
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春間(プロフ) - 匿名２号さん» コメントありがとうございます！ 面白いと言っていただけでとても嬉しいです。別作もよろしくお願いいたします！ (2022年3月25日 14時) (
レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
匿名２号(プロフ) - 面白くて時間を忘れて読んでました。必殺技の描写や試合運びなどわかりやすく表現されていてすごく参考になりました。ツインブースト打つくだりの話が特に好きです。素晴らしい作品をありがとうございました。アンソロの方も読みましたので別作も読んできます。 (2022年3月25日 8時) (レス) @page41 id: a481d4b51d (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - むすぶさん» コメントありがとうございます！ 楽しんでいただけて何よりです。嬉しいお言葉、励みになります！ (2021年8月31日 10時) (レス) id: 65d4199637 (このIDを非表示/違反報告)
むすぶ(プロフ) - はじめまして。とてもとてもとても面白くて、最初から一気読みしました！この小説に出会えて本当に良かったです。続編のご予定は無いとのことですが、夢主ちゃんとサッカー部や剣城とのその後が読んでみたかったです…春間さんの小説をこれからも楽しみにしています…！ (2021年8月25日 19時) (レス) id: c2d0a2f182 (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - mayaさん» コメントありがとうございます！ お褒めいただき光栄です。今後を読んでみたいというお言葉、とても嬉しいのですが、続編の予定はございません。申し訳ありません;; (2021年7月4日 16時) (レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：春間 | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/april_hrm
作成日時：2021年3月14日 19時
