10-30.青天の霹靂 ページ30
「＿＿雷門！」
その時、観客席のどこからか声がした。顔を上げなくてもわかる。如月さんと、稲妻ＫＦＣのみんなの声だ。
「雷門！ 雷門！」
次第に波は広まって、観客席が声を揃えて雷門の名を叫んでいる。力いっぱい叫んでいる。フィールドにいる私たちに届くように。
「雷門！！ 雷門！！ 雷門！！」
＿＿立ち上がらなくちゃ。
心臓が大きく脈打った。
観客の声が大きく反響して、頭が割れそうだ。激しい目眩に今にも倒れそうなのに、両脚はしっかりと地面を掴んで離さない。
「う、あ、ぁあ……っ！」
抑えきれない熱がぶわりと背中から滲む。うなじに、ちりちりと焼けるような痛み。
次の瞬間、目の前に雷が落ちて、視界が真っ白になった。
.
だんだんと視界が明瞭になっていく。
目の前には驚いた顔をした実幡の選手がいた。
その目線は私ではなく、私の背後に注がれている。それにつられて後ろを見上げると、巨大な龍が泰然自若と構えていた。
驚いて声も出せない。だが不思議と怖くはなかった。
龍はその青い尻尾を揺らしながら、フィールドを吟味するかのように眺めている。
「＿＿招雷の青龍」
それが、この化身の名前だ。
青龍は私の声が聞こえているのか否か、目玉をちらりと動かして私を見た。＿＿私が動くのを待っているのだ。
私は自身の両頬を叩いた。私しか動けないなら、私がやるしかない。私が＿＿何とかしたい。
地面を蹴ると、身体がふわりと浮くような感覚がした。普段よりずっと身体が軽い。これが化身の力なのかもしれない。
呆然としている相手選手の足元はがら空きで、ボールを奪うのは難しくなかった。
青龍は長躯を上手に使い、相手選手を寄せ付けないように動く。
私はゴール前でボールを高く上げ、それを追いかけて飛び上がった。それはいつもよりずっと高く、フィールドを見下すことができた。
ボールに鋭く蹴りを入れる。
頭上では真っ黒な雲から稲光が走り、ちかちかと辺りが光った。続いて、獣の唸り声のような、雷鳴の轟く音がする。
シュートは真っ直ぐに実幡ゴールへと飛んでいった。相手キーパーの真横を通り抜けて、実幡ゴールに叩き込まれた。
「ゴ……」
スタジアムがしんと静まり返った。
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春間(プロフ) - 匿名２号さん» コメントありがとうございます！ 面白いと言っていただけでとても嬉しいです。別作もよろしくお願いいたします！ (2022年3月25日 14時) (
レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
匿名２号(プロフ) - 面白くて時間を忘れて読んでました。必殺技の描写や試合運びなどわかりやすく表現されていてすごく参考になりました。ツインブースト打つくだりの話が特に好きです。素晴らしい作品をありがとうございました。アンソロの方も読みましたので別作も読んできます。 (2022年3月25日 8時) (レス) @page41 id: a481d4b51d (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - むすぶさん» コメントありがとうございます！ 楽しんでいただけて何よりです。嬉しいお言葉、励みになります！ (2021年8月31日 10時) (レス) id: 65d4199637 (このIDを非表示/違反報告)
むすぶ(プロフ) - はじめまして。とてもとてもとても面白くて、最初から一気読みしました！この小説に出会えて本当に良かったです。続編のご予定は無いとのことですが、夢主ちゃんとサッカー部や剣城とのその後が読んでみたかったです…春間さんの小説をこれからも楽しみにしています…！ (2021年8月25日 19時) (レス) id: c2d0a2f182 (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - mayaさん» コメントありがとうございます！ お褒めいただき光栄です。今後を読んでみたいというお言葉、とても嬉しいのですが、続編の予定はございません。申し訳ありません;; (2021年7月4日 16時) (レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：春間 | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/april_hrm
作成日時：2021年3月14日 19時
