10-16.不穏な影 ページ16
薄暗い通路に並ぶ。ここからでも観客席に溢れかえるほど人がいるのが見えて、思わず立ちくらみがした。
「Aさん、大丈夫ですか？」
輝くんが心配そうな顔でこちらを振り向いた。
「う、うん。何とか……」
ぎこちなく返すと、輝くんは困ったように笑みを返した。
「大丈夫ですよ。緊張してるのはみんな一緒です！」
近くにいた狩屋くんが、スタジアムのほうを向いたまま「そうそう」と輝くんの言葉に乗った。
これは私だけの試合ではない。私ひとりの試合ではない。雷門中のみんなの、そして雷門中を応援してくれている人たちみんなの試合だ。
ついそのことをを忘れそうになってしまう。私は両頬をパンパン、と二回叩いて、「うん、大丈夫」と二人に返した。
先頭の天馬くんが歩き出す。私たちは熱狂の渦へと身を投じた。
.
「長かったホーリーロードもついに決勝戦！！ 雷門中対実幡中の舞台はここ、アマノミカドスタジアム！ 実況は私、角間王将でお送りします！！」
実況の声にも、前回に増して熱が入っていた。その声に煽られ、耳をつんざくような歓声が響き渡る。
「勝つのは二連覇を狙う雷門中か！？ それとも急速に力をつけ決勝戦へ上り詰めた実幡中か！？ 優勝を手にするのは果たしてどちらでしょうかーーーッ！！」
雷門中が入場して間もなく、実幡中の選手たちがスタジアムに姿を表した。
昨日会った選手をはじめ、見知った顔が全体の三分の二ほど、残りは知らない選手だった。昨年からユニフォームを新調したのか、実幡中の選手たちは見覚えのない深い赤色のユニフォームに身を包んでいた。
ふと、隣にいた剣城くんが見たことも無い表情で実幡のベンチを見つめていることに気が付いた。
「剣城くん……？」
まるで野生の狼が相手を威嚇しているような＿＿こんなにはっきりと“敵意”を剥き出しにしている彼は見たことがない。
ただ、彼の様子から事態が尋常ではないことだけがわかった。
彼の視線の先には、変わった形のスーツを着た大柄な男性が立っていた。
「＿＿牙山」
剣城くんが唸るように呟いた。
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春間(プロフ) - 匿名２号さん» コメントありがとうございます！ 面白いと言っていただけでとても嬉しいです。別作もよろしくお願いいたします！ (2022年3月25日 14時) (
レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
匿名２号(プロフ) - 面白くて時間を忘れて読んでました。必殺技の描写や試合運びなどわかりやすく表現されていてすごく参考になりました。ツインブースト打つくだりの話が特に好きです。素晴らしい作品をありがとうございました。アンソロの方も読みましたので別作も読んできます。 (2022年3月25日 8時) (レス) @page41 id: a481d4b51d (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - むすぶさん» コメントありがとうございます！ 楽しんでいただけて何よりです。嬉しいお言葉、励みになります！ (2021年8月31日 10時) (レス) id: 65d4199637 (このIDを非表示/違反報告)
むすぶ(プロフ) - はじめまして。とてもとてもとても面白くて、最初から一気読みしました！この小説に出会えて本当に良かったです。続編のご予定は無いとのことですが、夢主ちゃんとサッカー部や剣城とのその後が読んでみたかったです…春間さんの小説をこれからも楽しみにしています…！ (2021年8月25日 19時) (レス) id: c2d0a2f182 (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - mayaさん» コメントありがとうございます！ お褒めいただき光栄です。今後を読んでみたいというお言葉、とても嬉しいのですが、続編の予定はございません。申し訳ありません;; (2021年7月4日 16時) (レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：春間 | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/april_hrm
作成日時：2021年3月14日 19時
