1-7.揺さぶられる心 ページ7
説明会の後、何人かの生徒が入部届を音無先生に渡していた。
私はというと、ミーティングルームの端で机に置かれた、何も書き込まれていない入部届と睨み合っていた。
「まだ迷ってる？」
気が付くと隣の席に松風くんが座っていた。
「うん……」
「転校してきたばっかりだし、他の部活に興味ある？」
「そういうわけじゃ、ないんだけど……」
そもそもどの部活にも入らないつもりだった。
私が言葉に困っていると、松風くんはぽつりと言葉を零した。
「違ったら、ごめんね」
「うん？」
「昨日、見学してる時にさ、泣いてた？」
喉からひゅっと嫌な音がした。
見られていませんようにという微かな願いはたった今打ち砕かれた。
サッカー部の練習を見学して涙を流す人間がどこにいる。変な奴だと思われたに違いない。
沈黙を肯定と受け取った松風くんが言葉を続ける。私はスカートを握りしめる自分の手を見つめていた。
「なんでかなって、考えたんだ。何か……サッカーで嫌なことがあったのかなって。でもサッカーが嫌いなら、わざわざ見学には来ないだろうし。それで、ちょっと気になって……」
松風くんが慎重に言葉を選んでくれているのがわかる。本気で心配してくれていることが、痛いほどわかる。
「ごめん……」
やっとの思いで紡いだ言葉はひどく震えていた。
松風くんは「なんで謝るの？」と優しく問いかけた。
「俺も、なんかごめんね。いきなり詮索されても困るよね」
「違うの、ごめん。あの、違くて」
思わず顔を上げると、松風くんは心配そうな、困ったような表情を浮かべていた。
私いま、すごく不審だ。支離滅裂だ。
途端に恥ずかしくなって、早口で「今日は帰るね」と言って席を立つ。
松風くんは少し戸惑った様子で「うん、またね」と言ってくれた。
サッカー棟を出る途中、誰かにぶつかりそうになって咄嗟に避ける。
「すみません！」
「いや……。A？」
はっと顔を上げると、剣城くんが怪訝そうな顔でこちらを見下ろしていた。
どうしてわざわざこういう時に会ってしまうんだろう。
私は逃げるようにしてその場を去った。
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春間(プロフ) - 名無し40482号さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！ 励みになります。 (2020年10月7日 13時) (
レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
名無し40482号(プロフ) - とても綺麗で読みやすい小説で、感動しました…（ ; ; ）更新楽しみにしてます。 (2020年10月6日 14時) (レス) id: b02fa3353c (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - Ruiさん» ありがとうございます。申し訳ないのですが、占ツクの使い方がよくわかっていないので今回は遠慮させていただきます。コメントありがとうございました！ (2020年8月9日 11時) (レス) id: e235827dac (このIDを非表示/違反報告)
Rui - 初めましてタイトル凄くいい感じ！もしよかったら好きな作品出来るイベントもし参加出来たら嬉しいです勿論CSS付きも可能です。「 あなたの小説読ませて下さい。」です。 (2020年8月9日 0時) (レス) id: 79cb60a812 (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - 充滞さん» ありがとう、頑張ります！ (2020年8月7日 19時) (レス) id: e235827dac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：春間 | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/april_hrm
作成日時：2020年8月5日 11時
