1-8.本当の気持ち ページ8
真っ直ぐ家に帰る気にもなれず、私は河川敷の階段に座っていた。サッカーから離れたくてあの場を後にしたのに、今私の目の前にはサッカーグラウンドが広がっている。なんて矛盾だ。
立てた膝に顔を埋めていると、誰かが走ってくる足音とともに「Aちゃん！」という声が聞こえた。
驚いて顔を上げると、葵ちゃんが手を振りながらこちらに駆け寄ってきていた。
「どうしたの？」
「んーと、ちょっと話したくて。隣いい？」
「うん」
葵ちゃんは息を整えながら、私の隣に腰を下ろす。松風くんから何か聞いたのだろう。
「天馬がね、俺悪いことしちゃったかなってすごくおろおろしてて」
そう言ってくすりと笑う。松風くんが悪いんじゃないのに、悪いことをしてしまった。
「松風くんは何も悪くないよ。私が……私の、ことで……」
上手く説明できなくてもどかしい。
「Aちゃんは、サッカー好き？」
「……え？」
思わず聞き返してしまった。葵ちゃんはじっと黙って私の返答を待っている。
「……私は、サッカーと関わらない方がいいの」
「どうして？」
全てを打ち明けたら、きっと葵ちゃんは慰めてくれるだろう。その優しさに甘えようとしている自分が嫌だった。
「知り合ったばっかりだし、さすがに言いづらいか」
理由を言えないことにも、気を遣わせていることにも申し訳なくなって謝ると、葵ちゃんは「いいよ」と首を横に振った。
「関わらない方がいいっていうのは、サッカーが嫌いってわけじゃないんだよね？」
小さく頷くと、葵ちゃんは嬉しそうに微笑んで「じゃあ、好き？」と付け加えた。私は少し迷って、また頷いた。葵ちゃんはますます嬉しそうにして「私も好き」と言った。
「Aちゃんがサッカーが好きってわかって、安心した！ 天馬が気になったのもそこだと思う」
「でも、好きなのに関わらない方がいいからって我慢するの、つらくない？ ダイエットみたい」
「ダイエット、って」
例えに思わず笑うと、葵ちゃんも笑い返してくれた。
「入部するかどうかは、ゆっくり決めたらいいから。
あっ、入部しなくても友達だからね。もちろん」
友達、という言葉が嬉しくて泣きそうになる。ギリギリのところで堪えて「ありがとう」と返した。
「私、学校に戻るね。鞄置いてきちゃった」
言われてみれば、彼女は鞄はおろか携帯も持ってきていないようだ。身一つで追いかけてきてくれたのか。
「私も一緒に行くよ。松風くんとちゃんと話したい」
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春間(プロフ) - 名無し40482号さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！ 励みになります。 (2020年10月7日 13時) (
レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
名無し40482号(プロフ) - とても綺麗で読みやすい小説で、感動しました…（ ; ; ）更新楽しみにしてます。 (2020年10月6日 14時) (レス) id: b02fa3353c (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - Ruiさん» ありがとうございます。申し訳ないのですが、占ツクの使い方がよくわかっていないので今回は遠慮させていただきます。コメントありがとうございました！ (2020年8月9日 11時) (レス) id: e235827dac (このIDを非表示/違反報告)
Rui - 初めましてタイトル凄くいい感じ！もしよかったら好きな作品出来るイベントもし参加出来たら嬉しいです勿論CSS付きも可能です。「 あなたの小説読ませて下さい。」です。 (2020年8月9日 0時) (レス) id: 79cb60a812 (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - 充滞さん» ありがとう、頑張ります！ (2020年8月7日 19時) (レス) id: e235827dac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：春間 | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/april_hrm
作成日時：2020年8月5日 11時
