272 最終戦 [3] ページ42
ザナークのシュートはピッチのど真ん中を進んでいた。それを見たザ・ラグーンはシュートを止めるため、中央に選手が縦に並ぶ。シュートがこのまま突き進めば、きっと止められてしまうだろう。
「残花シエラザード！！アームド！」
ミキシトランスした状態でアームドをする。強い威力のシュートに上乗せするように、この位置からさらに打撃を加えた。
「重力レンズ！！」
必殺技を発動した途端、時空が歪み、これから通るであろうシュートの軌道が湾曲する。ザナークのシュートと追加の打撃の威力を保ったまま、ボールは縦に並んだ選手たちの横を通過し、ゴールへ突き刺さった。
「よし！」
空いたサイドの空間を上手く使えた。それでいて、シュートの威力を保てたのは時空の歪みのお陰だ。この技なしに、今のザナークからのロングシュートを活かす方法はなかった。ザナークに向けてサムズアップした。ザナークは腕を組み、フッと笑いかえす。
「良いパスだったよ」
「そういうと思ったぜ」
トーブと黄名子の活躍により、追加のシュートが決まった。とうとう同点に持ち込んだぞ。その時点でハーフタイムを迎える。ザ・ラグーンに対して未だに恐れを抱くメンバーの不安を解消するように、円堂監督は励まし、問いかけた。
「お前たちにとってサッカーってなんなんだ」
初めに拓人くんが答えた。次々と回答が寄せられる。
「俺を導いてくれた光です！」
「あたたかい気持ちにしてくれる、お日さまみたいな存在です！」
「サッカーは...いつも一緒にいてくれる友達です！」
天馬や拓人くん、信助の表情がみるみる明るくなっていくのがわかった。
私にとってのサッカー。それって、なんだろう。とても大切なものであることは間違いない。
「Aはどうなんだ」
「サッカーは...夢のような存在です！」
この超次元なサッカーはこの世界でしか味わえない。この夢から覚めてしまえば、離れ離れになるだろう。
「そうか。見せてくれ。お前たちがやってきたサッカーを！」
後半戦、クロノストームは最高の状態だった。士気が高まり、皆が補い合い、パスを繋いだ。心の余裕が生まれたから、助け合い、前に進むことができる。完全に歯車が合った瞬間だった。
最前線に移動した天馬とザナーク。ザナークのポジションはゴール前だが、もう前線まで上がってきていた。追加点をもぎ取り、ゴールを決めた。その時点でホイッスルが鳴る。クロノストームは勝利した。
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作者名：充滞 | 作成日時：2024年3月4日 12時
