桜前線 4【イナクロ】 (ページ43)

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176　化身アームドの訓練、再びページ43

翌朝、澄んだ空の下で化身アームドの訓練が始まった。シュウが化身アームドの指導をしてくれるという。

「みんな。僕の真似をして」
「ただじっとしてるだけぜよ」
「本当にそれで化身アームドができるようになるの？」
「やりたいんだろ。化身アームド」
「まずはやってみたらどうかな」
「そうだな。きっと意味があるんだと思う」

目を閉じて、じっとその場に立つ。化身アームドの訓練ということだから、もっと体力を消耗するような訓練なのかと思っていた。でも、これからすることはそうではないらしい。ただじっと目を閉じて、気持ちを落ち着かせて、集中する。滝の音が背景に聞こえてくる。呼吸をする度、心が落ち着いていく。

「みんな。そのまま聞いてほしい。心を静かにして、守りたいものを想い、さらに強くなることを願う。その想いの強さが化身と自分を引き合わせる...」

私にとって守りたいもの。なんだろう。サッカー、拓人くん、雷門のみんな。大切でかけがえのない存在で、自分を変えてくれた存在だ。そして、自分の両親、友達...。会社の人たちだってそうだ。お世話になっている人たち。今まで気づかなかったけど、みんな大切なんだ。

「ほら、風が来てる」

まるでこの自然と一体になっているような感覚。鳥の鳴き声も、風の音も、水の音も聞こえる。

「風を纏うように、化身を全身に纏う姿を想像してみて」

風を纏うように、化身を...

「この島の風は、君たちと一つになりたがっているよ」

風と一つに...

化身を初めて出したあの感覚を思い出す。身体の奥底から湧き出る何か。熱くて、弾けるような感覚。なにかが自分の中で渦巻いている。

その時、異質な風を感じた。ガッと目を開き、反射的にその方向へ向き、片膝を盾のように向けた。

「エイナム」
「見つけた。まだ試合は終わっていない」

あのシュートは、敢えて私を狙ったようだ。私たちは森の中にあるグラウンドへ移動することとなった。