王者の咆哮【イナイレ】 (ページ8)

今日:4 hit、昨日:4 hit、合計:12,356 hit

-7 ページ8

夏季授業期間の最終日、帰路で通る昼の河川敷を進んでいた時。3人の男子学生がグラウンドを駆けているのが見えた。1人は円堂、そして知らない人が2人。

私はその場で一度立ち止まるも、また足を進めた。もし円堂が1人でサッカーをしているのであれば、きっと私は声をかけに向かっていただろう。しかし、現に彼は仲間に囲まれている。あの輪に入り込む勇気がないし、そもそも円堂以外の人にはあまり興味がない。

その時、道路の端に一匹の子犬が現れた。最初は見過ごしていたが、その子犬がある瞬間道路を横断したのを見るなり、私は戦慄した。子犬の進む道では大きなトラックが通過しようとしていた。呼吸も忘れ、私は反射的に走り出した。自分が轢かれる可能性を一切考えずに、目の前の子犬を助け出した。トラックは凄まじいブレーキ音をたてて急停止した。

「…___ハー、ハ……」
「きゅーん」
「ハ……ハー、ハー…」

子犬は私の腕の中にいた。何が起きたのかもわからないような表情で私を見つめている。よく見ると子犬には首輪がつけられていた。

ドク、ドク、ドク。動脈が動く感覚がする。全身が熱い。呼吸をするので精一杯で、手足が動かない。その場に座り込み、救えた命を前にして安堵していた。そして、トラックの運転手が身を乗り出し、上から怒鳴りつけてきた。子犬の存在には気づいていないようだった。

「おい！！危ないだろ！死にてえのか！」
「す、すみません」
「ったく、轢く寸前だっただろうが！」
「すみません。すみません」
「気をつけろ！」

トラックは嵐が過ぎ去るように消えていった。張り詰める緊迫感から解放され、ほっと安堵の溜息をつく。暫くして子犬の飼い主が青ざめた顔をして駆けて来たので、その人に渡した。飼い主は何度も頭を下げて感謝していた。

強い視線を感じてふっと振り返ると、そこには呆然と立っている円堂ら3人がいた。その時が、円堂の仲間との出会いだった。