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夕方、剣城が滞在先のホテルに訪れた。彼はいつもの紫の上着とズボンを身につけていた。彼によると部活が先ほど終わったらしく、有難いことに兄の見舞いにも行かずにこちらに来るのを優先してくれたようだ。ドアを開けて招き入れると、彼は私の様子を観察していた。しっかり施錠してから、私と彼は話を始めた。



「とうとうフィフスセクターが手を出してきたか。だが、制裁にしては度が過ぎる」
「それは思った。フィフスにしてはやりすぎなような気もする。それなら…犯人はフィフス関係者じゃなくて、一般の人ってこと？」
「その可能性もあるな」




剣城は腕を組みながら話す。



「もしかしたら、フィフスは私を島へ連れ戻そうとしているのかもしれない」
「…ゴッドエデンにか？」
「そう。裏切ったシードを再教育するために」
「あり得るな」
「牙山は遺伝子の研究をしていて、その実験対象が私だった。経過観察をしたり、新しい実験をするために誘拐しようとしていたのかもしれない」
「何？」



剣城に詳しい説明をすると、彼は少し驚いていた。そして納得したような表情をする。



「Aが特別視されているのはそういう理由か」
「私って特別視されてるの？」
「どう見てもそうだろう。フィフスセクターはお前を手放したくない筈だ」




その時、チャイムが鳴った。ドキリとしたが、剣城が「俺が出る」と言って玄関に向かったので少し安堵した。玄関の様子をドア越しに見ていたら、その先から神童の声が聞こえてきた。私や剣城は驚いた。

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