46. 大切にできない自分の気持ち ページ9
「なんで髪、切ったんだ」
突然そう問われた。隣からカチカチとゲーム機の入力音が聞こえてくる。彼はテレビの方向に顔を向けた状態で、私に話しかける。
画面上では次々と対戦相手が倒されていく。彼の強さが示されていた。剣城京介という人間は、きっとどの世界線でも、それぞれの分野で才を開花させる人なのだろうとその時感じた。
「…んー。気分かな」
「そうか」
「京介は髪切ったりしないの？」
興味本位でそう尋ねると、彼は数年前を思い出すように話した。
「...豪炎寺修也って、知ってるか」
「？ うん」
「あの人に憧れていたんだ、お前と出会う前に」
「豪炎寺修也」という単語を耳にし、私は脳内で必死に時系列を整理していた。偶に「この時点でこの単語が出るのはおかしくないか」と考えることがある。例えば、サッカーの存在が希薄になった世界でサッカー界での円堂守の大活躍の話が出るのは明らかに矛盾している。それと同様に、彼の話は矛盾していないかと考えてしまうということだ。
それはまあいい。よく考えなくても、今の世界線は「円堂守が正史通りにサッカー部を設立し、ある程度サッカーを隆盛させた」時代だ。京介が豪炎寺に憧れをもつのはなんら不思議なことではないだろう。
「サッカーはやめたのに、豪炎寺さんの真似をいつまでも続けてしまう。可笑しいだろ」
彼は、豪炎寺の真似をして髪を上げる自分を自嘲気味に笑った。私はその自嘲に対し、すぐさま反応した。
「おかしくなんかないよ」
私は彼に向き合い、そうはっきりと告げた。彼は視線に気付いてこちらに顔を向けた。彼の手は止まっていた。
ゲームが好きな人が途中で遊びを急に止めることの難しさを私は嫌という程知っている。だからこそ、彼が完全に手を止めて私に意識を向けたのは非常に驚いた。彼はなにか期待をしているような、不安に感じているような目をしていた。心の拠り所を探しているような目だった。
気付けば私は口を開いていた。
「京介は、今も、サッカーが好きなんだよ」
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ルナストーン(プロフ) - …っ！？（何が言いたいか:最初から照れさせる気だったんですかぁっ！？） (2020年10月12日 0時) (
レス) id: f44ffe4945 (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - ルナストーンさん» 読者の方を照れさせるつもりで書いたので良かったですー！ハハ (2020年10月12日 0時) (レス) id: 48c4c5694c (このIDを非表示/違反報告)
ルナストーン(プロフ) - 充滞さん» ぁ…因みになんですが…消しても大丈夫です。僕は…。 (2020年10月11日 23時) (レス) id: f44ffe4945 (このIDを非表示/違反報告)
ルナストーン(プロフ) - 充滞さん» （［甘い戯れ］の後のやつの最後に向けてなのです）こちらも見ていて何故だか恥ずかしくなります。 (2020年10月11日 23時) (レス) id: f44ffe4945 (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - 夜月さん» 見てみたいですね〜。いえいえ (2020年10月11日 22時) (レス) id: 48c4c5694c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：充滞 | 作成日時：2020年10月10日 21時
