通訳ヌナと…【Jungkook：6】

見れない -Jungkook- ページ12

「どうぞ」

「お邪魔…します」


なるべくヌナを見ないようにし、
すぐに背を向けると、
何も言わずに元いた布団の上に戻った。

「わ…すごい。和室があるんだね」

「ん…」

聞こえるヌナの足音。
驚く声。

心臓がゾクゾクして落ち着かない。

「ゲーム？」

「そ…」

本当はこんなゲームどうでもいいんだけど。
でもやってないと、
どうすればいいかわかんないから。

ヌナがいるのにヌナに背を向けて、
何も言わずにゲームをする…ことしかできない僕。



さっき。


〈今夜、会えるかな？〉

ってヌナからカトクが来た時、
またあの感覚。

胸が大きく弾んだ。

ヌナから求められてるこの感じ。
たまらなく嬉しくて。

だからこの前と同様、
もっと求めて欲しくなって、
あえてサラッと返事を送ったんだけど…

何なのか？

既読がちっともつかなくて、
10分…20分…30分…

何なの？

会えるって聞いてきたのはヌナなのに。

喜ばせといて！

…と思って、
ちょうどワインを１本開けた瞬間、
電話が鳴った。

ヌナはどうしてこうも簡単に…
僕の気持ちを上げたり下げたりできるのか。

「もしもし」

そんな気持ちを抑えて電話に出るも、
何も言ってくれなくて。

「ヌナ？」

聞こえてるのかと呼び返したら、

「グク…」

その声を聞いた瞬間、
頭に浮かんだのはあのヌナの顔。

ゼヒョンヒョンといた時の、
僕が嫌な言葉を言った時の悲しそうなヌナの顔で。

そして返事をしたら、

「会いたい」

泣きそうな声でそう言われて。

でもどうしてだろう？

僕も…って言えばいいのに、
そうなのに…
でも言えなくて。

愛想なく伝えた部屋番号。

けど電話を切った瞬間
ダッシュで鏡の前に移動し、
髪を整えたり、
顔をもう一度洗ったり、
うがいしたり。

そして鳴った部屋の呼び出し音。

ドアを開けた瞬間、
そう…見ないようにしてたんじゃない。

見れなかったんだ。

ずっとずっと会いたかったヌナが目の前にいて、
すぐそばにいて、
お風呂上がりなの？
ふわっと石鹸の香りが香ってきて、
しかも浴衣とか…



「座ったら？」

視界の隅に入ったヌナの足。

どうでもいいゲームを真剣にしてるフリをしながら、
ヌナの方は見れずにそう言ったけど。

スッ…と。

畳を擦れる音がして、
それだけで背中がぞくっとした。

「うん…」

ヌナの言い方。

だよね。

僕がこんな態度してんだもん。

でもどうしたらいいのか…

気持ちも身体も頑なに、
ヌナの方を見ることができない。

限界 -You-→←会いたい -You-

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